成り代わりリドル

 物心がついたときから施設で暮らしていた。友達と呼べる存在は居なかったけれど人を思いのままに操る力があり、不思議な力を持つ自分は特別な存在……そう、例えるなら神なのだと思っていた。
 それが違うとわかったのは、ダンブルドアという人間が施設に現れたときだ。私にしか使えないと思っていた力……それ以上のものを見せ付けられ愕然とした。

「ヘンリーや。君には学校で学ぶ権利がある。わしと一緒に来るかね?」
「わ、私……」
「案ずるでない。君は素晴らしい魔女になるだろう」

 ニコリと笑みを浮かべるダンブルドア。その笑顔も、言葉も、差し出された手ですら胡散臭い。だが、その手を取るしか道は残されていなかった。



「ヘンリーってとっても素敵ね」
「まさに理想の女性だ」
「なあに、あなたヘンリーを狙ってるの? 駄目よ、ヘンリーにはもっと素敵な人がお似合いなんだから」

 魔法を使い、ホグワーツ中の情報を集めることが習慣になっていた。
 魔法界に来ても私の力が周りに埋もれることはなく、巧みな話術で人を虜にする術も身に付け、施設でのように敬遠されることもない。全てが、順調だった。

「あら? これは……」

 トイレの洗面台に、不思議な紋章を見付けた。
 コツ、コツと杖で叩いてみたり意味のない単語を唱えてみるも何かが起こる気配はない。
 ……変ね。こんなに試してもヒントすら浮かばない厳重さ……いいえ、厳重なのではなく、全く的外れなことをしていたのではないかしら。そう、例えば、特別な能力がないと開かないとか。

「――開け」

 ゆっくりと現れたのは地下へと繋がるパイプだった。
 少しの迷いもなくその中に滑り込み、そこで出会ったのは素晴らしい大蛇、バジリスク。サラザール・スリザリンに隠されたというバジリスクは、その瞳で簡単に人を殺すこともできるという。

 これからの学校生活は楽しいものになるだろう、と口の端を持ち上げた。

120427
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