成代レギュラス1 初めて箒で空を飛んだときも初めて魔法を使ったときも私に興味を示すことのなかった両親が、兄上がグリフィンドールに入ったことを知るなり私に期待を浴びせた。嬉しい気持ちと虚しい気持ちが胸を渦巻く。 「貴女は間違いを起こしていないみたいで安心しています、ですって」 母様からの手紙を憎々しく思うもこうして手紙を貰えたことを嬉しく思ってしまうのは何故だろう。親と子の絆は偉大、ってことかしら。壊れ物を扱うかのように手紙を机にしまうと、夕飯を食べに広間へ向かった。 「ヘンリー……」 「ごきげんよう」 鉢合わせてしまった兄上と友人らしき三人に軽く頭を下げて横を通り過ぎようとしたのだが、くしゃくしゃ髪の男の子に腕を掴まれる。スリザリンは他寮の人に嫌われることが多く、また何か文句を言われるのかもしれないと身構えたのだが、手を退けさせるとすんなり離してくれた。 「何か御用ですか?」 「御用? ああ、そうだね。僕じゃなくてシリウスが、だけど」 「シリウスさんが?」 兄上がグリフィンドールに入ったときから「兄上」と呼ぶことを禁止された。兄上が改心したら呼んでいいと両親に言われているが、そんな日はこないだろう。 「あー……ヘンリー、元気か?」 「はい、体調に不良はありません。シリウスさんこそお怪我をしていませんか?この間、また派手な悪戯をしたと耳にしましたが」 「ああ……この間の奴な。なんとかかすり傷で済んだけど、一歩間違えば悲惨だったな」 「元気なのはいいことですが、お気をつけて」 頭を下げて足を動かすと、今度は引き止められることはない。久しぶりの兄上との会話を思い出し、少しだけ楽しい気分になった。 120406 しおりを挟む/目次 [top] |