成代マルフォイ1

 私の一番の自慢は、誇り高きマルフォイ家の血を引き継いでいることだ。高貴な血筋を持つ私に逆らう者など誰もいない。その中でも特に忠実なのがクラッブとゴイルで、小さい頃から騎士のように守ってくれる二人がとても好きだった。

 今日は入学に必要なものを揃えに両親と共にダイアゴン横丁にやってきた。教材を買ってる間に制服の採寸を済ませなさい、と言われ服屋に入ると黒い布を被せられた。体のサイズを調べていく手がなんだか怖くて、気を紛らわせようと隣で採寸をしている男の子に声を掛ける。

「こんにちは。貴方も新入生?」
「うん、そうだよ」
「なら、私と一緒ね。……ねえ、貴方はどの寮に入るの? 私は勿論スリザリンよ。それ以外のところなんて考えられないもの」

 父上も母上も私は絶対にスリザリンだと讃えてくれ、私自身もスリザリンに入るのだと確信していた。誇らしげに胸を張る私を不思議そうな顔で見る男の子。……寮のことを知らないのかしら?

「……もしかして、マグルの子ども?」
「ううん、両親は魔法使いと魔女だよ」
「そう……そうよね。貴方、優秀そうな顔をしてるもの。寮のことをご両親に聞いていないの?」
「父さんも母さんも死んでるから」
「え……あ、その、ごめんなさい」
「いいよ」

 両親が片時でも居ないと不安になる私にとって衝撃的な事実だった。誰と暮らしてるのかしら、両親が居ない不安はないのかしら。そんなことを考えていたら男の子の採寸は終わってしまい大男と一緒に去って行ってしまう。今度会ったらきちんと謝罪しないと。






 月日は流れ、ようやくホグワーツに入学し組み分けの儀式を受けることが出来たのだが、頭にちょこんと乗る帽子は信じられないことを言う。

「ハッフルパフ!」

 よりにもよって一番入りたくなかった寮の名前を叫ぶ帽子を床に投げ付けた。慌てて駆け寄ってきた教師を無視してもう一度帽子を被る。「ハッフルパフ!」同じ単語を繰り返す帽子に絶望する。これは何かの間違いだ。私が落ち零れの寮になど入るはずがない。

――少女よ、よく聞きなさい。

頭の中に誰かが話し掛けてくる。

――君はスリザリンでもやっていけるだろう。

だったら、なぜ……。

――君が一番輝ける場。そして、誠の仲間と出会える場こそが、ハッフルパフ! 今は悔やむかもしれない。けれど、素晴らしい学生時代を過ごせることを保証しよう。

 惨めだった。いくら先生に抗議しても決定がくつがえることはなく、ギリギリ歯を食い縛りながらハッフルパフのテーブルに腰を下ろす。食事をする気になどならず、消えてしまいたいとひたすら願った。

「ようこそハッフルパフへ。僕は三年のセドリック・ディゴリー。君は?」

 ディゴリー……聞いたことのない名前だ。まさかマグル出身なんてことはないわよね? いいえ、例えマグル出身でなくてもハッフルパフにまともな人間なんて居ないわ。……私も、ハッフルパフだけれど。
 自分から声を掛けたというのに私より緊張した面持ちのセドリック。それを見ていたら、少しだけ肩から力が抜けた。「ヘンリー」と単語で返事をするとディゴリーは軽く相槌を打ちそれ以上何も言わない。それでも気まずい雰囲気はなく、むしろその静かな空間が私の心を優しくほぐしてくれた。

120404
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