風紀委員の仕事3 森という生徒は、雲雀くんにもらった調査書からは考えつきもしない性格をしていた。私の両手を握り締めたかと思うといきなりマシンガントークを始めた彼は、私が言葉の半分すら意味を理解していないことに気づくと、照れ臭そうに頭を掻いて眉を下げる。 「あの、ヘンリーさんですよね」 「はい。あなたは、元一年C組の森拓海くんですね」 「お、俺のこと、知ってるんスか?」 「並盛中の問題児だとうかがっています。……それで、私となにを話したいのでしょうか?」 早速本題に入ろうと話を切りだしたところで「僕の前で群れるなんていい度胸だね」と、雲雀くんがトンファーを取り出し襲いかかってきたので、慌てて攻撃を避ける。なんなくトンファーを避けることに成功したが、反応の遅れた森くんはまともに攻撃を受け、新たな怪我を体に刻んだようだ。 追撃しようとしている雲雀くんの前に割り込み、トンファーを掴むと、トンファーに仕込まれていた鉤が飛び出し手を傷つける。鉤が出た瞬間に避けることもできたが、あえてトンファーを離さなかったのは、私が避けたら森くんがまともに攻撃を受けることになるからで、個人的に森くんの安否を気にかけているわけではないが、教師として見過ごすわけにはいかないし、なにより、あまりにボロボロな風貌の森くんを見て哀れになったのだ。 130106 end 目次/しおりを挟む [top] |