命からがら談話室に逃げてきた私を心配するように近寄ってきたのはグリフィンドールの寮生であるハリーで、なんでスリザリン寮にハリーがいるのかと考える余裕もなく、疲れた体をソファーに横たえる。「なにかあったの? あったんだよね? 言ってみて」というハリーになんでもないと言ってもしつこく食い下がってきて、ついポロリと全てを話してしまったのはその数分後のことだ。
 静かに話を聞くハリーが不気味で、思わず言葉につまると鋭い眼光で睨まれる。嘘を言ったら死の呪文を唱えそうなハリーに促されるまま前世のことまで包み隠しなく話し終えると、ハリーは無言で女子寮に向かっていった。
 女子寮から悲鳴が上がり数分、いったい何事だと騒ぎ出した生徒をよそに女子寮から堂々と降りてきたのは日記帳を脇に抱えたハリーで、清々しい笑顔で私の前に現れた彼は、杖で日記帳を灰に変えてみせる。「もう大丈夫だよ」と私を抱き締めるハリーが後五年もかからずにヴォルデモートを倒し、数々の死亡フラグをへし折りまくるなんて夢にも思わず、呑気に今年の試練は終わったと安堵した。

「ねえヘンリー、僕らがいずれ結婚するって話、嘘じゃないよね」

 スリザリン寮は危ないから。僕の目の届かないところにいるのは不安だから。だから、僕の部屋においで。
 私が頷くまで永遠と言葉を並べるハリーに折れてやってきたグリフィンドール寮の一室で、そんな質問をされた。原作の話から少しずつずれてきてしまったので先のことはわからないと答えるとハリーはふてくされたような顔をし、同じ部屋の片隅で私たちの会話を聞いていたロンはとんでもないというような顔で話に割り込んでくる。ヘンリーの結婚なんて認めない! と言うロンは相変わらずのシスコンで、そのせいでロンとハリーの仲は一時こじれてしまった。

121102
end
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