07

 心配そうな顔をしたサクラが言葉を発しようとするのを遮り「俺も作戦会議するってば!」とナルトが両手を挙げた。軽く首を振って邪念を払い、俺も賛成する。あからさまにナルトが嫌な顔をしたが、無視だ。

「持ち物はなにを持っていくつもりだ?」
「クナイを五本とナイフを十一本、あとは――……こんな感じね」

 教科書に沿った答えを並べるサクラはよしとして、ナルトの並べていく答えに頭が痛くなる。明らかにバランスの悪い考えをしているナルトに注意をくわえ、自分のホルスターから忍具を取り出す。

「俺は明日もこれを持っていくつもりだ」
「ナイフが多いのね……」
「ああ、ナイフは使い勝手がいい。武器以外にも用途がたくさんある。……ナルト、いい加減そのむくれた顔止めろ」
「だってだって! サスケばっか命令しちゃってさー」
「ナルト、アンタなに言ってんのよ!」
「よせサクラ。……ナルト、不満はわかるが纏め役がいねーと話が進まないだろ。お前が進行するか?」

 俺の提案に元気よくナルトは頷いたが驚くほどナルトの作戦は無謀だったので却下し、サクラのすすめの元俺が再び話を進めていく。

「カカシ先生は“相手”は自分だと言ってたから、恐らくカカシ先生相手にミッションをクリアすんだろ。すなわち、カカシ先生よりなにかが優れていれば有利になる。体術、幻術、忍術……それ以外にもパワー、スピード、アイディア、センス、なんでもいい。自分の中で突飛したものはあるか?」
「俺は全部を凌ぐ!」
「…………サクラは?」
「知識は負けないわ!」

「ふむ。カカシ先生がどんだけ強いのかは謎だが、上忍レベルと考えるとするぜ。恐らく、俺らは何一つとして奴に勝てない。まあ、当たり前だな」
「でもさでもさ、カカシ先生ってそんなに強そうに見えないってば」
「確かに……あんなブービートラップにも引っかかるし」

 実は弱いんじゃない、と囁き合い、ナルトが調子に乗り始めた頃を見計らい手を叩く。二人が口を閉じたのを確認してから「カカシ先生に負けねーってばよ!」……煩いナルトを物理的に黙らせ“強い上忍”を想定して作戦を立てる。

「いいか。俺が唯一俺らの中でカカシ先生に勝っていると思っていることがある」
「それって、俺だろ!」
「そうだ、ナルトだ」

 間髪入れずに肯定するとサクラだけでなくナルトまでがポカンと口を開ける。聞き間違えではないかと確認してくるサクラに再度同じ言葉を繰り返し、照れ笑いを浮かべるナルトを横目で見て鼻を鳴らす。「ナルトの馬鹿さは、カカシ先生にも負けない」一瞬間をおいて笑い出すサクラと怒り出すナルトを無視して口を開く。

「ふざけて言ってるわけじゃねえ。ナルトの馬鹿さは武器だ。俺にすら予想不可能なアイディアは、使える」
「馬鹿って言うんじゃねー! キーッ!」
「でも、馬鹿さが武器って……」

 暴れ出したナルトに縄を巻きつけ、サクラに視線を向ける。目が合った途端ぽっと顔を赤くするサクラにつられるように顔が熱くなっていき、それに気づいたナルトがさらに大声で喚いた。(不覚に赤くなったのは、女に免疫がないからであって他意はない。少し可愛いとは思ったが、他意はない)

「うっせーナルト、黙れ! いいか、お前の馬鹿みてえなアイディアは相手の不意をつくことができるんだ。その一瞬が、俺らのカギとなる」

 縄抜けができないのかびったんばったんと暴れるナルトの背中に足を乗せ、高々と宣言をした俺に向けられる視線が一つ二つ――三つ。気配を消して見守っているカカシ先生の笑い声が、微かに聞こえた気がする。
 完全にカカシ先生の気配が消えたのを確認してから声をひそめ、二、三言交わしてから俺らは解散した。

120903
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