04

 夜も遅くなってしまい、サソリさんへの挨拶は明日にしようと決めて布団に潜り込む。(今さらサソリさんに会いに行くのが怖くなったわけではない、決して)
 イタチが用意したこの部屋には窓がついていて、月明かりが俺の足元を照らしている。腕を枕にしてそれを見つめていると、不意に光が遮られた。こんなに近づくまで気配に気づけなかった自分の失態に舌打ちするも、仁王立ちしている人物を見て妙に納得してしまう。

「こんな夜分にどうしたんスか、サソリさん」

 声が震えたのは気のせいだろう。いつでも動けるようにとベッドから体を起こすと、一歩サソリさんが近づく。ゴクリと唾を飲む音がやけに部屋に響き、一瞬間をおいて俺の胸倉を掴んだサソリさんは窓に向かい俺を投げ飛ばした。
 まともな抵抗などできずなんとか受け身をとることはできたが、追うようにやってきたサソリさんに顔が引きつる。急いで体勢を整えると足の裏にチャクラを集中させ、自分のもてる最高の速度で走り出した。

「逃げるんじゃねーよ」
「なら殺気しまえ! お前に殺されるのはごめんだ!」

 同じ速度で走っているくせに余裕そうな顔をしているサソリさんは楽しそうに笑う。
 一時間ほど追いかけっこをした後、あっさりと俺は捕まった。(サソリさんはいつでも俺を捕まえることができたが、逃げ惑う俺を見て楽しんでいたようだ)サソリさんが満足するまでボコボコにされた俺はボロ雑巾のような体を引きずりなんとかアジトまで帰り着き、自室の入り口に倒れ込んだ。

「あれくらいで、だらしねえ」
「いっ……蹴らないでください」
「もっと鍛えねえと、殺すぜ」

 冗談など一つもないサソリさんの言葉に口元が引きつる。
 一般人はもちろん、原作のサスケよりもはるかに優れていると自負しているがそれ以上に暁の人間は化け物だ。その一員であるサソリさんに同等の力を求められて数ヶ月経つが、俺はサソリさんの足元にすら及ばない。

「ヘンリー、さっさと立て」
「無理です、そんな気力ありません」
「……チッ」

 面倒臭そうに舌打ちをしたサソリさんは俺の首根っこを掴みベッドの上に放った。ミシ、と音をたてベッドのスプリングが軋み俺を受け止める。柔らかい場所に落ちたというのに体に痛みが走り眉を寄せると、サソリさんが近づいてきて俺の服を掴んだ。乱暴に俺の服を脱がせたサソリさんは、どこから取り出したのか瓶を手にしている。瓶に指を入れ、中のジェルを掬い取ったサソリさんはそれを俺の体にある傷に塗っていった。

「さっさと治せ。明日は俺の任務に同行させる」
「? デイダラは、暫く任務なんかないって言ってましたけど……」
「アイツとは別行動の任務だ。忍具揃えておけよ」

 そう言うと、サソリさんは俺をベッドから蹴り落とした。不意の出来事に頭から落ちそうになったが体を捻ってなんとかやり過ごす。打ちつけられた箇所をさすりながら体を起こすと、サソリさんがベッドを陣取っていた。俺の布団に寝転がるサソリさんはなにを言っても動かないだろうし、俺は仕方なく寝床を探すことにする。(床で寝るのはごめんだ)――とは言っても、行くべきところは決まっていた。

「デイダラ」
「うん? どうした、こんな夜に」
「お前のベッドを貸せ」

 俺の気配で起きたのか眠そうに目をこするデイダラのベッドを奪おうとするもなかなか上手くいかない。

「どけよ」
「なんでオイラが。自分の部屋あんだろ」
「サソリさんに取られたんだよ。フリースペースに行こうにも、お前が昼間爆発させただろ」
「芸術に犠牲はつきものだ、うん」
「知るか。とにかくデイダラのせいなんだから責任とれ」

 デイダラから奪った布団を肩に乗せ、ヒラヒラ手を動かして退くように促す。けれど一向にベッドを譲ろうとしないデイダラは少し考えるような素振りをみせ、爆弾発言を落とした。

「一緒に寝るか?」

 誰がお前なんかと寝るか、と即座に切り捨てるとデイダラは不満そうに唇を突き出してベッドの上で手足を動かしている。まるで赤ん坊が駄々をこねるかのような仕草に呆れ、デイダラの背中に手を回すと転がすかのように地面に落とす。ようやく寝床を確保した俺は肩まできっちりと布団を被り眠りに落ちた。

120830
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