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 人生に絶望した俺は、全てを終わらせる計画を練っていた。黒い背表紙の本を懇切丁寧に開き、捲れたページに並ぶ血のように赤い文字に指を滑らせる。俺にしか読めない文字で綴られているそこには、世界を意のままに操る方法が示されていた。

「ふーん。こんな簡単に世界って終わっちまうもんなんだな」

 世界を終わらせる方法、と書かれた章は五ページほどの短い文で語られていた。世界を終わらせるために必要なものは術者の魂、ただ一つ。
 まるで悪魔との取引だ、と笑う。俺は躊躇いもせず魂を捧げた。――その日、世界は崩壊した。





 死後、魂を好きにされる、と記されていた文字通り俺は魂を好きに弄ばれた。しかも、俺にとってもっとも最悪な形で。

「(なあんでまた赤ん坊からやり直さなきゃなんねえんだ)」

 赤ん坊の器に魂を無理矢理詰め込まれた俺は、赤ん坊らしからぬ憂いを帯びた表情で天井を見上げる。もう一度人生をやり直すなんて面倒だとは思うが、赤ん坊の姿では自分で死ぬことすらもできず、仕方なく毎日を過ごしていた。

「(世界を終わらせる方法を覚えてりゃあ、前みたいにこの世界も終わらせてやんのに……)」

 前の世界を平等世界と表すなら、この世界は弱肉強食の世界だった。(平等世界とは、決して平等な世界ではなかったが、表向きはそうしたがる世界だった)忍という職業が繁栄しているこの世界は、力こそが全てらしい。
 俺にもっとも適した世界と言えるが、全くこの世界に興味がわかず、早くこの世界も終わらせてしまいというのが本音だが、黒い本があったということはしっかり記憶に残っているというのに、不思議なことに本の中身を全て忘れてしまっていた。――ああ、世界なんて終わっちまえばいいのに。

120827
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