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 万華鏡写輪眼を手に入れた後、イタチを見つけ出すのに時間はかからなかった。どうやら鬼鮫のやつはいないようで、久しぶりの兄弟水入らずだ。

 一歩近づくと、イタチの肩が跳ねる。珍しく余裕のないイタチがおかしくて、喉を鳴らす。不愉快そうに眉を動かしたイタチにまた一歩近づき、手を伸ばした。俺の手を払い落とそうとするイタチの手首を掴み、いともあっさりイタチを気絶させる。
 跳ね上がった自分の力を持て余すことはなく、よく体に馴染んでいる万華鏡写輪眼の最終チェックを終えた俺は、ようやく自分の祈願が達成できることに興奮していた。ホルスターから抜き出したクナイを振りかぶり、迷いなくイタチの目に突き刺す。ドロリと溢れてくる血に構わず、指で目玉を掻き出した。

「アンタがいなければ、俺は……っ」

 苦々しく呟く俺の背後に忍び寄る影に気づき振り返ると、感情の読めない表情をした鬼鮫が立っていた。俺からイタチに視線を移した鬼鮫は「おやおや」と体を屈める。鬱陶しいと睨んでも鬼鮫が退く気配はなく、仕方なく俺は作業を再開した。
 幾度も頭の中でシミュレーションしてきた手順を確認し、指に神経を集中させる。瞼を閉じ自分の眼球の形を確認してから、目頭に人差し指を、目尻に親指を無理やりねじ込んだ。神経を傷つけないよう慎重に取り出した己の眼球を、イタチの目にはめ込む。辺りに広がる血の臭いにむせかえりそうになりつつ、異常なまでに神経を使う作業に終止符を打った。数十分もかからなかったというのに、滴り落ちるほどの汗を額から流して。

「兄さんがいなければ、俺はまた同じ人生を繰り返していた」

 眼球のなくなった目から零れてくる涙を拭おうとすると、存在を忘れかけていた鬼鮫が近づいてきて、簡単に目の治療をしてくれた。目を覆うように巻かれた包帯は煩わしいが、包帯があってもなくてもどうせ視界は見えないのだと、放置する。

「殺すのかと、思いました」
「あ? なんでだよ」
「あの場面を見れば、誰もがそう思うかと」
「……使いものにならない目を治してやっただけだ」

 気配を探ってイタチの体を抱き上げる俺の背中に、鬼鮫が声をかける。こんなことを、イタチさんは望むのでしょうか? 楽しさをはらんだ声に答える義務などなく、イタチの指にはまった指輪を地面に落とすと、その場から姿をくらませた。

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