06

 野宿をした私たちが出発の準備をしていると、空から黒い物体が落ちてきた。上空から落ちてきたはずなのに軽やかに着地をしてみせた人物はつい昨日別れたばかりのジュダルで、見知った相手だということに安心した私は警戒を解く。どうしてこんなところにいるのだとジュダルに問うと彼は笑顔でのたまう。

「俺のことはどうでもいいんだよ。それより二人は、また旅に出るのか? なら、この間話したダンジョンに行こうぜ」

 目を輝かせるジュダルを疑わしそうに一瞥したリャンは、私の耳に口を寄せ囁く。

「いくらなんでも、タイミングがよすぎます」

 リャンの言うことは、私も思っていたことだ。私たちとジュダルが別れたのは昨日のことで、私たちがこの場に訪れたのは昨晩のことだった。この場所は、昨日ジュダルと別れたダンジョンからも、私の住んでいた国からも離れたところにあり“偶然”出会うことなどありえない。

「ジュダル、どうして私たちにそこまでこだわる?」
「ん? 俺が目を付けてるのはアンタだけだよ、お姫様」
「私……?」
「そう。アンタは、強い」
「……確かに私は国で一番の実力者であったけれど、強さだけが目的なら私を選びはしないでしょう。なにが、目的?」
「目的っつーかなー……武力だけじゃなく、目が強いんだよ。お前はトップに立つ者の目をしている。俺は、そういう人間を探してた」
「?」
「俺は戦争が好きなんだ。強い人間を育て、強い国を育て、戦争を引き起こし、そして、勝利する! 楽しそうだろ?」

 突然ぶっ飛んだ発言をするジュダルに目を丸くするも、次第に意味を理解し笑いが零れた。娯楽のために戦争を引き起こすなんて、この男はなにを考えているんだか。――だが、今の私にはそれがとても面白いことのように感じた。

「国って、何人集まればできるものかしら」

 零すように呟いた言葉にジュダルは嬉しそうな顔をし、リャンは僅かに目を見開く。顔を歪めるリャンが反対をしたならば全てを白紙にしようと思ったが、彼は特に文句を言うわけでもなくいつも通り私の意志に従う。こうして私は一国を立ち上げることを決意し、そのための力を得るために新たなダンジョンに向かった。

120725
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