成長

「それにしても、いつ戻れるのかしら」

 一時間ほど談笑をしていたのだが、いつまで経っても元の時代に戻れる気配はなかった。
仕方ないとボンゴレ本部まで連れてきてくれた雲雀にお礼を言い沢田に会ったのだが結局原因はわからない。
 原因不明ならどうしようもないとすぐに割り切りとりあえず家に帰って落ち着きたかったのだが、ボンゴレのボスも、雲雀すら私の住まいを知らないという。十年後の私は謎を持ちすぎではないかと怪しむも、自分の性格を考えてみればなんら不自然でないことに気づく。

「一時的な策として、ボンゴレ本部に部屋を用意したから」
「ありがとう。助かるわ」
「研究班に調査を依頼しておいたから、じきに元の時代に戻れると思うよ。…………そんなに人の顔をじっと見てどうしたの?」
「沢田が頼りになるから驚いて。ねえ、できればお腹に入れるものを欲しいのだけど」
「ああ、用意させるよ。…………そんなに驚いた顔をして、どうしたの?」
「沢田が人に命令するなんて……」

 十年前では考えられない出来事に純粋に驚いていたのだが沢田は不服そうにする。十年前の沢田だったら困った顔をして目を逸らしていただろうに。
 十年前の沢田は見てるだけなら面白かったが、この沢田は会話も楽しい。
 口元に薄く笑みを浮かべていると、大きな音をたてて部屋の扉が開いた。血相を変えて入ってきた人物は見知らぬ若い男性で、沢田に何か用があるのかもしれないと一歩壁に寄って道を開けたのだが、あろうことか男は私に抱きついてきた。

「ちょっ……なにするのよ」
「ヘンリーさーん!」
「なんで泣くの!?」

 私の腰にへばりついて泣き喚く男に幻術を使ってまで逃げたのはなんだか嫌な予感がしたからだ。私が逃げたことを悟りさらに大泣きする男は気味が悪い。

「ヘンリー、姿を消すことないだろ」
「いつから私を呼び捨てにするようになったの」
「ヘンリーがそうしろと言ったんだよ」
「ふうん。……ねえ、その子は部下? とても弱そうだけど」
「あれ、ヘンリーは十年後のランボに会ったことがなかったっけ?」
「ランボ? ……ランボに気に入られることなんかしてないけど、なんでこんなに懐いてるの」

 いまだ「ヘンリーさん! ヘンリーさん!」と泣いているランボの十年前の姿を思い出し、仲良くした覚えなんかないと首を傾げるも敵対している覚えもなかったので幻術を解いた。飛びついてくるランボを避け、そのままの勢いで机に突っ込んだ彼に合掌する。

「なんで避けるんですか! 久しぶりに会ったのに!」
「……復活が早いわね」
「ヘンリーはなかなか本部に顔を出さないから、ランボはずっと寂しがっていたんだよ」
「そう……私も将来はボンゴレ本部には近寄らないようにするわ」

 一拍間を空けてから私の言葉の意味を理解したランボが抗議してきたのでそっと頭を撫でてやると懲りずにまた抱きついてきた。

「見た目は成長したのに中身の成長は追いついてないみたいね」
「ガーン!」
「それは口に出して言うべきじゃないわ」

 ショックを受けているらしいランボにそろそろ離して欲しいと声をかけても無反応なので仕方なく沢田に椅子を借りてそこに腰を下ろす。
 タイミングよく沢田が頼んだ料理が運ばれてきたのでご飯にすることにした。私の分だけでなく沢田くんの分まであり一緒に食事をしていると、ランボが物欲しそうに見てくるので分けてやる。あ、笑うと可愛いかも。

「犬……欲しいかも」
「犬?」
「犬が飼いたいなって思ったの」
「……なんでこっちを見て言うんですか!?」
「ハハッ、ペットにはやれないよ。今は人手不足でさ」
「人手不足じゃなかったらペットにしてもいいんですか!?」

 沢田に代わってランボが突っ込みを担当するようになったのか、と目を細めるとまたランボが叫ぶ。

130214
次のページ#
目次/しおりを挟む
[top]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -