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 アスマ先生の推薦により参加することになった中忍選抜試験。シカマルは相変わらず面倒臭がっていたけれど、私はやる気満々だった。早く忍として一人前になりたかったのはもちろん、中忍になったらイタチに近づける気がしたのだ。
 イタチのことを完全に踏ん切りがついたわけではないが、恋愛感情を抜きにしても彼には憧れと尊敬を抱いている。そんなイタチに少しでも近づきたい。

「あら、サクラたちも受けるのね。絶対負けないから」

 腰に手を当ててそう言うと、サクラはもちろんのことナルトまでが噛みついてきた。俺だって負けないってばよ、と言うナルトに口の端を持ち上げると「楽しそうだね、ヘンリー」とチョウジが言った。



 構えていたわりに一次試験はあっさりと通ってしまい拍子抜けしたが、二次試験からが本番のようだ。不吉なことが書かれた契約書にサインするのは一瞬躊躇ったが、配られた巻物をシカマルに持たせて死の森に足を踏み入れる。人気がないかを確認してから作戦をたてるために顔を寄せ合った。

「弱そうな相手を選んで巻物を奪うわよ」
「だな。ナルトたちの班が一番楽そうだが……」
「サスケが厄介ね。それならキバたちの方が隙がありそう。……チョウジ、お菓子食べてないで話し合いに参加しなさいよ」
「シカマルが考えるのが一番いいよ」

 音がたたないよう気を遣ってはいるのか柔らかい食べ物を片手にペロリと親指を舐めるチョウジの言葉はその通りであるが、私とチョウジも考える力を身につけなければならない。判断力が生死を分けるといっても過言ではないのだから。

「!」
「……! 誰か、来たわね」
「だね。どうする?」
「まだ戦うには早い。逃げるぞ」
「「了解」」

 お互いに視線を交わし、言葉にすることなくあらかじめ決めておいた合流場所を確認し合う。強く頷いてから、チョウジが地面に向かい煙爆弾を投げつけたのを合図に三方向に散った。敵は私たちを見失ったのか追ってくる気配はないが、念のために遠回りをする。気配の消し方には自信があり、何人かの受験者とすれ違ったものの誰にも気づかれることはなかった。
 そろそろチョウジたちと合流しようと考えていると、近くで戦闘が行われていることに気づく。怪しげな風貌の男と向き合う人影がサクラとサスケだということが目視でも確認でき、相手の男との圧倒的な戦力の差に身震いする。――あんな男に適うはずがない。
 すぐさま逃げようと判断したにも関わらず、あろうことか体は交戦のど真ん中に飛び出していた。

「「ヘンリー!」」
「金縛り、ね。随分と桁違いの相手と戦ってるのね」

 舌なめずりをする男に悪寒がし、額を流れる汗を感じながら印を組んでいく。私の印を見て、それまで余裕そうにしていた男が表情を変えた。発動した心転身の術が成功するとは思っていなかったが、まるで術の危険性を既知しているかのように男は慎重に避ける。
 おかげで男に捕らえられていた二人が解放されたが、何かが引っかかる。サスケが反撃をしている間に術の失敗から立ち直り、最低限の動作で札付きのクナイを取り出し男が立っている太い木の枝に投げつけた。爆発したクナイに連鎖するように木が燃え上がっていく。あらかじめ撒いておいた燃料に上手く着火したようだ。

「逃げるわよ」
「待って! ナルトが……!」
「チッ、ナルトは俺に任せろ。ヘンリーたちは今すぐ逃げろ」
「でもっ」
「サクラ、サスケを信じなさい」

 心配そうにするサクラの腕を掴み全力で走り出す。一度振り返ろうとしたサクラだが、心配を振り切るよう首を振って前を睨みつける。
 どれだけの時間走り続けたのかはわからないが、大幅に体力が削られてしまった。荒い息を整えるために小休憩を挟む。

「ここまでくれば平気、かしら」
「ええ。……ナルトとサスケくんも無事だといいけど」
「仲間の心配もいいけど、自分の心配もしなさい。私はもう行くわね。……必ず塔に来なさいよ」
「ヘンリーこそね」

 コツンと拳をぶつけ合い、ニヤリと笑い虚勢を見せつけ合ってからサクラと別れた。
 大分時間は過ぎてしまい、チョウジとシカマルと待ち合わせしていた場所に飛び降りても二人の姿は見当たらない。まだ来ていないのか、一時的に居ないだけなのか。暫くその場で待っていると、チョウジでもシカマルでもない気配が近づいてくる。複数感じる気配に一人で遭遇したらまずいと急いでその場を離れ、木の上を飛んで二人を探すように顔を動かす。なかなか合流できないことに焦りを感じ始めたとき、ようやく二人を見つけることができた。

「ヘンリー、遅かったね。食料を調達してきたよ」
「巻物はまだ手に入れてねーけどな」
「ごめん、ちょっと道に迷ってたの。……それより、あの待ち合わせしてた場所に誰か別の忍が来たわ。巻物狙う?」
「……強そうな相手か?」
「私たちよりはね。でも奇襲をかければ……」

 チョウジが渡してくれる食料を胃に流し込みながら話を進めていく。乗り気でないのかチョウジは渋い顔をしているが、それを無視して作戦を決定した。

120717
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