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 イタチは優秀で、なにもかもが完璧で……女の子に人気があることは知っていた。そんなイタチに彼女ができたということはなんら不自然ではない。ましてやちんちくりんな私がイタチと付き合えるなんて思ってなかったけれど……

「うわーん! イタチの馬鹿野郎!」
「そうです! もっと言ってやりなさい!」
「……なぜ俺たちのところに来た」
「だってサクラもテンテンさんもいないし、リーさんとネジさんなら馬鹿にしないで聞いてくれそうだったから」

 憧れの先輩テンテンさんと班を組んでいるリーさんとネジさんとは特別仲が良いわけではなく、それでもこうして私の愚痴に付き合ってくれる彼らは良い人なのだろう。
 修行をする二人に混じり、主に体術を鍛えながら喚き散らしたらだいぶ落ち着いてきた。涙に濡れる顔を手拭いで綺麗にしてくれたネジさんにお礼を言い腹に溜まった空気を全て吐き出す。

「少し休憩にするぞ」
「ヘンリーさん、お水をどうぞ」
「ありがとうございます」
「怪我にはこれを塗れ」
「ありがとうございます」

 傷心のせいか人の優しさを身に染みて感じながら水を飲み込み流した水分を補給する。ズズッと鼻をすすりながら目立つ怪我にのみ薬を塗りつけると再び修行するために立ち上がった。
 そんな私の前に砂埃を巻き起こしながら現れたのはキバで、心の許せる相手に会ってまた涙腺が緩むも意地で涙を食い止める。

「シカマルとチョウジにヘンリーを探すように頼まれた」
「そっか……リーさん、ネジさん、私そろそろ帰りますね。付き合ってくださりありがとうございます」
「ヘンリーさんはお強いですから、こちらこそ勉強になりました。また声をかけてください」
「気をつけて帰れ」

 腰を折ってお辞儀をしてからいつもより口数の少ないキバとともに演習場を後にする。
 夕日が沈みかけた空は綺麗で、上を見ながら歩いていると危なっかしいとでも思われたのかキバが私の手を握った。赤く照らされたキバの横顔を見つめると、真剣な瞳とぶつかる。

「ヘンリー」
「?」
「俺じゃあイタチの代わりにはならねえか?」
「……馬鹿。そんな台詞で私を落とせると思ってるの?」

 一瞬キバの手が震え、名残惜しそうに手を離した彼はガシガシと頭を掻き「だよなー」と目線を上げる。少しキバに傾きかけた気持ちを無視して足を進めて行くと幼馴染み二人とアスマ先生が並んで立っていた。真ん中で手を振っているチョウジに応えながらキバの手を掴み走る。
 恋は上手くいかなかったけれど、私にはこんなにも素敵な仲間がいるのだからこれからも強く生きていけるだろう。

120716
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