我愛羅が口添えしてくれたおかげで一週間の休みが一ヶ月に延びた。久しぶりの休み、それも長期の休みがもらえたことを手放しで喜び、みんなへの挨拶もそこそこに木の葉の里を飛び出す。必要最低限の荷物を肩に提げて木の葉の里を抜けた私は、風の国を目指して足を進める。一般人の足なら数日はかかるが、私なら遅くとも明朝には着くだろう。
 木の葉の里を出るときには頭の上にあった太陽が沈んでいくのを見送りながら小休憩を挟む。竹でできた水筒で水分補給をしていると、上空に分厚い雲が浮かび上がった。こんな時に雨かと眉をしかめ雨宿りのできる場所を探すも、すぐにそれが危惧であることに気づく。雲だと思っていたそれは砂であり、宙に浮かぶ砂から舞い降りてきたのは我愛羅だ。

「ヘンリー、久しぶりだな」
「久しぶり……って、なんで我愛羅がここに?」
「迎えに来た」

 当然のように言った我愛羅に目を瞬くと、手を握り締められる。足の下から砂が溢れ出し、バランスを崩し転びそうになったとき、我愛羅と繋がった手が引かれた。腰に腕が回り、我愛羅の胸に顔がぶつかる。お礼と謝罪を言い慌てて離れると、また足を崩し砂の上から落ちそうになり、反射的に我愛羅の服を掴んだ。

「…………」
「…………」
「……危ないから、おとなしくしていろ」
「うん……そうする。ねえ我愛羅、」
「なんだ?」

「迎えに来てくれて、ありがとう」

 誘ってきたのは我愛羅だが、最終的に風の国に来ると決断したのは私自身で、我愛羅が迎えに来る必要などない。風影という大変な仕事をしている我愛羅はいつも多忙で、恐らく無理をして迎えに来てくれただろう彼に誠意をもって感謝した。
 気にするなと言うように首を振る我愛羅に口元を緩めながら空に視線を移すと、視界いっぱいに星が広がる。最近は星を眺める余裕もなかった、と任務続きだった日々を思い返し、これから暫くは忍者ということを忘れ、風の国での生活を楽しもうと肩から力を抜く。
 風の国での生活を思い浮かべたとき、必ず隣に我愛羅がいるのは砂での知り合いが我愛羅だけだからだろう。

130716
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