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 正直、拍子抜けをしていた。
 アスマ先生、チョウジ、シカマル、そしてノイと横一列に並び頭を下げる。仏頂面をしている孔雀様と薄く笑みを浮かべている凛様に見送られて孔雀一族の屋敷を後にした私は、ホッとしたような気が抜けたような気分で帰路を歩いていた。――あれ以来、凛様とも孔雀様とも特別なことを話しはしなかった。孔雀様が私にプロポーズをするだなんて思ってないし、私も孔雀様と結婚するつもりはない。だから素直に安堵するべきことではないのかもしれないが、胸の奥に一つのわだかまりが。二週間という時間が過ぎても、彼ら二人のことを思い出すと胸がモヤモヤした。なにかが、引っかかる。

「ヘンリー?」
「イタチ!」

 仮面を外した彼と会うのは久しぶりだった。軽装をしているイタチに走り寄る私の頭からは数秒前まで考えていたことが消えていて、イタチとの偶然の出会いを手放しに喜ぶ。

 ――二週間前のあの日、姫の護衛任務を終えて木の葉隠れの里に帰還した私たちは任務の報告をするため火影邸に赴いた。報告にはたいして時間がかからず、ようやく一休みできると肩から力を抜いていたときに任務を与えられたときの絶望は今でも忘れない。
 人手が足りないとかなんとかで、チョウジたちと別の任務を与えられた私は、なぜか、ノイと班を組まされた。それ以来なぜかノイと一緒に任務をすることが増え、そのせいか、イタチと会うのは久しぶりだというのに久しぶりな気がしない。
 どこかで、ノイと任務をこなせることを喜んでいる自分に気づいていた。尊敬している彼と肩を並べて任務をすることが誇らしかったのかもしれない。浮かれた気分の私は、暗部と共に任務をこなすことの意味なんて考えもしなかった。

「今日は休み?」
「ああ。ヘンリーも休みか?」
「ううん、私はこれから火影邸に用があるの」
「火影邸に? ……なにをしに?」

 怪しむように眉を寄せたイタチが鋭い視線を向けてくる。

「さあ、よくわからない。着いたら教えるって言われているの」
「そうか……」
「難しい顔をして、どうしたの?」
「いや、なんでもない。俺も一緒に行っていいか?」
「うん。でも、面白いことなんてないわよ」
「ああ、構わない。ヘンリーの用事が終わったら、一緒に食事へ行こう」

 表情を緩めて言うイタチの誘いに首を縦に振り、彼と肩を並べて歩く。
 他愛ないことをお喋りしていたらあっという間に目的地までたどり着き、部屋の扉を開くと、火影様が寛いだ様子で椅子に腰をかけていた。
 先月、三代目火影様が火影の座を引退をし、新しく五代目に就任を果たした綱手様だ。机の端に、山のように積まれている書類が見えていないのか、火影様は退屈そうに欠伸をしながら私を手招く。

「お前に、特別任務を言い渡す」
「また“特別”任務ですか? 特別じゃなくなってますよ、もう」
「そういうな、今回のは本当に特別なんだ。なんせ名指しでの依頼だからな」

 パチリと瞬きをしてから隣のイタチに声をかけようとしたのだが、彼の姿が見あたらない。ああ、そういえば部屋の前で待つと言っていたっけと綱手様に視線を戻すと一枚の紙を渡される。どうやら、依頼書らしい。達筆すぎて読みにくい依頼書に目を通し、眉を寄せた。

「護衛任務? ……それも、一週間も」

130210
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