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 里の一番高い場所にある丘の上に生えている柔らかい芝生のクッションに腰を下ろす。キョロリと辺りを見渡しても誰もおらず、その場に寝転がると綺麗な青空が目の前に広がった。シカマルもよく空を見てるわよね、などととりとめのないことを考えながら流れていく雲を見送っていたのだが、人の気配が近づいてくるのを感じ顔を上げる。ゆっくりとした動作で隣に腰を下ろすサイに、目を瞬く。

「どうしたの、こんなところに」
「ヘンリーの気配を感じたので来ました」
「……ふーん、キバみたい。その画材はなに?」
「絵を描いていたんです」
「絵? ねえ、私も描きたい」

 キャンパスを用意し本格的に絵を描こうとしているサイの足をつつくと、スケッチブックを貸してくれた。お礼を言って筆を握ると迷うことなく白に墨を塗りたくり、用紙いっぱいに世界を描き込む。覗いてこようとするサイを追い払い、一日の半分をかけて描き上げた絵を掲げる。
 特別上手いとはいえないが、それなりに描けた絵には私の仲間が所狭しと並んでいた。

「僕も描いてくれたんですね」
「うん。仲間だから」

 完成した絵をサイに見せると、相変わらずの表情で彼は笑う。サイの描いた絵も見せてと頼むと、見やすいようにキャンパスを傾けてくれる。

「サクラ、ナルト、あと、カカシ先生に代わって班の先生になった人ね。……サスケは?」
「まだ特徴を掴んでいないので」
「私が描いてもいい?」

 筆を持ってサイの反応をうかがうと、あっさりと了承してくれたので空いているスペースに描き込んでいく。今のサスケより少し幼くなってしまった気もするけれど、上手く描けたと思う。サイの画風と違うのでサスケが浮いてしまっているが、サイの班員みんなが並んでいる。

「サイたちの班ってさ、これからどうなるの? 五人のままってことはありえないし」
「大和隊長が抜けることになりました。班のリーダーはサクラです」
「サクラが!? はあー……知らなかった。サスケったら、この間会ったときに教えてくれたらよかったのに」
「サスケと仲が良いんですか?」
「うん。サスケのこと知りたい?」

 サスケが班に戻ってから一ヶ月は経っているが、サスケとサイの関係は他人以下だとか。それを知ったときはどれだけ仲が悪いのだと呆れたが、首を縦に振るサイはサスケに興味がないわけではないらしい。サスケもサイに全く興味がないわけではないみたいだし、もしかしたらすれ違っているだけなのかもしれない。
 思い出話を挟みながらサスケのことを教えていくと、サイは真剣な表情で耳を傾けた。

「サイとサスケって、似ているわ」
「?」
「気持ちを表情に出さないし、なに考えてるかさっぱりだし、突然変なことを言い出す」

 クスクス笑うと、サイは不思議そうに首を傾げる。

「それに――」

 私を好きだなんて馬鹿なことを二人して言って、と言葉を繋げようとしたところで、息を呑む。サスケが帰ってきたり、色々あったせいで頭から飛んでいたが、そういえばサイに告白をされていたのだ。
 思い出したら平静ではいれなくなって、体が熱を帯びてくる。顔が赤いですよ、と頬に手を伸ばしてくるサイの手を全力で避けると素早く立ち上がり「用事思い出した!」と言葉を残してその場から姿を消した。

120820
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