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 試験を通過したことを報告しようと思いイタチを発見したまでは良かったが、彼と一緒に歩いている人物を見た瞬間時間が止まった。イタチと同じようにうちはの家紋を背負う可愛らしい女性――彼女が、イタチの想い人だろうか。
 私に気づいたイタチは少し罰の悪そうな顔をしたが、何事もなかったかのように消えていく。その場で立ち尽くすことしかできない私は、胸を締め付ける苦しさに堪えきれず顔を伏せた。

「ヘンリー?」

 耳馴染みのある声に我を取り戻し固く閉じていた瞼を持ち上げる。きつく閉じていたせいで視界がぼやけ、何度か目を擦ってようやくいつもの視界に戻った。
 目の前に立つ人物は、いつものように高い位置で髪を縛り付け半分だけ開いた目をこちらに向けている。

「……シカマル」
「こんなとこでボーっとしてどうしたんだよ」
「イタチの、彼女見た」
「へえ」

 短く相槌を打ったシカマルは特になにを言うでもなく私の隣に並び、歩くのを促すように背中を押してくる。特に逆らうことをせず足を動かし、一人きりになりたくなってシカマルと別れようとしたのだが、強く腕を掴まれそれは叶わなかった。加減なく握られた腕が痛み、離せと手を振ってもシカマルは無視をする。

「辛いなら、そう言えよ」
「……シカマル、あんたも忍でしょ? 確かに辛いけど、それを表に出すべきじゃないわ」
「なら、そのしけた顔をどうにかしろ」
「……レディーに向かってなんてことを」
「俺の前で、今さら意地張ることねーだろ」

 脳髄まで響くその言葉にふるりと体が震える。「お前がオネショしたことだって知ってるっつーのに」…………余計な一言に思わず右の拳が前に突き出たのは仕方がないと思う。なにするんだ、と頬を腫らして怒るシカマルにレディーの恥ずかしい過去を口にするんじゃないと言い聞かせ、すっかり調子の戻った私はシカマルと手を繋いで帰路を歩いた。(いつもは恥ずかしいからと嫌がるシカマルがなにも言わずに手を握り返してくれ、少し笑ってしまった)

120803
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