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 三次試験の前に急遽行われることになった予選。とんとん拍子に進んでいく戦いに目を奪われていたが、ついに自分の番が訪れると緊張で足が震えた。それでも無理矢理足を動かして階段を下りていくと、擦れ違ったシカマルに「ビビってんのか?」と渇を入れられる。チョウジにも励ましてもらい、緊張は少しずつ抜けていき、みんなが注目する舞台に二本の足で立った私は、対戦相手であるテマリをしっかり見据えた。
 砂の連中は強い。恐らくまともに戦っても勝てないだろう。

「第五回戦、山中ヘンリー対テマリ。――開始!」

 合図とともに走り出し、先に攻撃を仕掛けたのは私だった。クナイを右手に構えそのままテマリに突っ込むも、彼女は巨大な扇子で簡単に止めてみせる。次いで距離をとろうとするテマリに回し蹴りをし、慣れたようにそれをいなす彼女に息をつく間も与えずに次々と攻撃を繰り出していく。

「いい加減そんな攻撃が私に通じないと――」

 言葉とともに動きを止めたテマリに、ニヤリと笑う。

「チャクラを流し込んだ糸をフィールドに張り巡らせた、ってとこか」
「ご名答。簡単には切れないわよ。無理に動いたら肉が切れちゃうから気をつけて」
「ふん、それはどうかね」

 くだらない、と言うように鼻を鳴らしたテマリは最小限の動きで扇子を動かし突風を生み出す。ただの風ではなく、私が時間をかけて組み上げたチャクラ糸は消し飛んでしまった。まさかチャクラ糸を切られるとは思わず動揺をし、それを見逃すはずのないテマリがもう一度扇子を振り攻撃をしかけてくる。なんとか直撃は避けたものの壁に体が叩きつけられ、口から嫌な声が漏れた。

「さて、反撃といこうかね」

 まずい、と冷や汗が額を伝う。テマリの持つ大きな扇子から彼女を中〜遠距離型の忍だと憶測して近距離の戦闘を仕掛けていたが、今私とテマリの間には距離がある。急いで体勢を立て直し近づこうとするも、その前にテマリが動く。容赦なく襲いかかる攻撃にいくつもの傷が体に刻み込まれる。
 ゲホリと口から血が吐き出され、意識が朦朧としてきた。

「ヘンリー、しっかりしろ!」

 どこから聞こえたのかも誰が言ったのかもわからなかったが、確かに耳に届いた声に意識が呼び戻される。顔を上げると、テマリが私にとどめを刺そうとしているところだった。私がもう動くことができないと思っているのか大きく振りかぶるテマリ。――今だ。

「心転身の術」

 素早く印を組むと警戒したテマリがさらに距離をとり、それを見越して発動させなかった術を解いて壁を蹴り一気にテマリに近づく。クナイにチャクラ糸をくっつけて初めのようにフィールドに糸を巡らせていくと、テマリは苛ついたように扇子を構える。

「同じことをやるなんて、馬鹿かい?」

 扇子を広げ全てを吹き飛ばそうとするテマリの動きが止まる。

「……この試験、棄権します」

 淡々とした口調で言うテマリに試験場が騒然とする。確認をとる審判にテマリがしっかりと頷いてみせ、私の勝利が決まる。
 術を解除して倒れ込む自分の体に精神を戻した私は勝利を祝してくれるみんなにピースをつくってみせ、不思議そうに首を傾げる人がいる中チョウジとシカマルに走り寄った。

120728
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