*97 あの双子は、デリカシーという言葉を覚えるべきだ。 後ろから追い掛けてくる双子を無視していたが、あまりにもしつこく名前を呼ぶものだからつい足を止めてしまった。抱きつこうとするジョージさんの腕を避け、後頭部にチョップをすると非難される。私は悪くない。 「朝っぱらからそんなに怒るなよ」 「そうそう。せっかくの休みなんだし」 肩に腕を回してくるフレッドを睨んでいると、反対隣に居たジョージさんがフレッドを突き飛ばす。フレッドのスキンシップを受け入れるな、と説教をしてくるジョージさんの声を遮るように、私のお腹が音を立てた。…………。そういえば食事の途中だったとお腹をさすっていると同じタイミングで双子が吹き出す。じわじわと赤くなる顔を隠すように背を向けて歩き出そうとしたのだが当然のように二つの影が退路を阻む。こんな時ばかり行動の素早い二人に連れていかれたキッチンで、お腹が膨れるほどの料理をご馳走してもらった。 「この生き物は、ゴブリンの親戚かしら?」 「……屋敷僕を知らないのかい?」 「屋敷僕?」 「魔法使いの家に居る召使いだよ」 「それは知ってるわ。でも、日本の屋敷僕は……もう少し可愛げがあるわ」 目玉が零れ落ちそうなところは似ているが、こんなに大きな体格はしていないし、もうちょっとマシな衣服を着ている。ボロ雑巾のようなものを身に纏う彼らに違う服はないのかと問い掛けると「ありませんです!」と誇らしげに答えた。 120619 目次/しおりを挟む [top] |