*94 先生たちが杖を振っても消えることのなかった煙が少しずつ収まっていき、騒いでいた生徒たちも落ち着いてきた。 「(あら? セドリック?)」 何故レイブンクローの席に彼が居るのだろうと首を傾げるも、どうやら自分が間違えてハッフルパフのテーブルに座ってしまったらしい。私に気付いたセドリックが不思議そうな顔をした後、口を開く。 「グオオオーッ」 セドリックの口から獣のような声が放たれたことに驚いた生徒が「グギャギャ!」と声を上げて椅子から転げ落ちる。その生徒の声も人間の声ではなくいったいどうなっているのだとまた生徒が騒ぎ始めたのを先生が魔法を使い黙らせた。 「静かに! 少し複雑な魔法ですが、すぐに解くことが出来ます。心配ありません。声がおかしい生徒は傍に居る先生に治してもらいなさい」 マクゴナガル先生の指示が飛び生徒は順になって声を戻してもらっている。中には自分で解いている生徒も居た。 自分はどんな声になっているのだろうと小さく声を出すと「グホッ ホホー」と悲惨な声が出たので早く元の声に戻してもらおうと先生の所へ向かう。 「おおっと、ヘンリー」 「君は駄目だよ」 腕を掴まれた拍子に声が出そうになるもなんとか飲み込む。「今日一日は僕らの言うことを聞く約束だろ」と私のサインがしっかり書かれている羊皮紙をちらつかせるジョージさんに嫌だと首を振るも取り合ってもらえない。こんな声を聞かれるくらいなら舌を噛んでやると歯に力を入れたが、痛いのですぐに諦めた。 120528 目次/しおりを挟む [top] |