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 今年のハロウィンはチョコレートを用意した。丸みを帯びたその形状はトリュフのようだが、味は全く違う。一口食べれば口から火が出るほど辛いチョコレート擬きなのである。
 見た目と味のギャップがあるだけでなく「食べると嘘が吐けなくなる」という悪戯を施した。真実薬のように強制的に真実を喋らせることはできないが、嘘を言おうとした途端口の中が猛烈に辛くなるのだ。辛味が得意な人なら嘘を吐けるかもしれないが、少なくとも私には嘘を吐くことはできなかった。

「ヘンリー、今年も作ったのか?」
「ええ! 今年はこれよ!」

 ジャーンと効果音を口で言いながら大量生産したチョコレートをサムくんにあげると、彼は用心するようにチョコレートを裏側までしっかり確認する。恐る恐る口に入れたサムくんは、すぐにチョコレートを吐き出したいという顔をした。

「嘘を吐くとまた口が辛くなるから気を付けてね。効果は半日よ」
「そういうことは食べる前に言えよ」

 げんなりとした表情をするサムくんだが、説明を聞きもせずに食べたのはそれなりに楽しんでくれているからだろう。私たちの会話を聞いていたサムくんの友人がわざと嘘を言わせようと色々話し掛けている。そんな彼らの口に魔法でチョコレートを押し込むとみんなそろって辛がっていた。

120526
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