*87 柔らかく微笑むジョージさんはいつもよりハンサムに見えて直視できない。恥ずかしがる私の頬に手を添えたジョージさんは顔をどんどん近付けて――。 「きゃあ!」 十年と少し生きてきたが、飛び起きるなんて経験初めてだ。バクバクと脈打つ鼓動。 あれが本物の夢なのかこれから起こる未来が見えたのか、判断することができずに胸を押さえる。 「ヘンリー? どうしたの?」 二年の部屋替えのときに同じ部屋になったクリス・アルゲアさんが心配そうに私の背中を擦る。正直に話すことができずもごもごしているとさらに心配された。 怖い夢を見たのだと適当な理由を言ってアルゲアさんに目を向け、外がまだ薄暗いことに気付く。 「ごめんなさい、起こしてしまって」 「平気よ。……それにしても、他の四人はよく寝てるわね」 アルゲアさん以外の四人は、去年も一緒の部屋割りだった子たちだ。もちろんドリトルさんも同室である。 去年は二段だったベッドが今年からは天蓋付きベッドが五つある部屋となり、階段を登る手間がなくなった。隣のベッドの持ち主であるドリトルさんを覗いてみるとぐっすり眠っている。私が逆の立場でも起きることはなかっただろうし、みんなが鈍感なのではなくアルゲアさんが敏感なのだろう。 120518 目次/しおりを挟む [top] |