*83 マルフォイくんもスリザリンのシーカーになったらしく、四寮あるうちの三つの寮のシーカーが二年生というのは少し特殊な状態ではないのかと思った。「マルフォイくんもシーカーなんだね。おめでとう」と祝福の気持ちを籠めて言うとマルフォイくんは自慢気に胸を張る。 アダムスさんやドリトルさん、他のレイブンクロー生や知り合いにもシーカーになったことは広まっていて「おめでとう!」「ヘンリーがシーカーならうちの寮は負けないぜ!」とたくさん声を掛けられて恥ずかしかった。 クィディッチの練習はとてもやりがいがあった。夏休み中も一人で練習をしていたのだが、こうしてきちんと組まれたメニューをこなしていくと自分の実力がしっかり伸びていくのを感じる。 クィディッチのチームに入ってからは休日も練習という忙しい日々を送っていたのだが、今日は久しぶりに完全オフだった。ゆっくり体を休めることも大切だとキャプテンに言われたけれど、毎日乗っていた箒に乗れないというのは落ち着かない。 少し乗るだけ、と言い訳をし、一年のときに一度だけ行ったことのある禁じられた森の近くに来ていた。 「あれ、君は……」 まさか人が居るとは思わず箒を抱き締めて逃げようとしたのだが腕を掴まれた。必死に言い訳を考えながら顔を上げると、前に一度だけ見たことのある甘いフェイスがそこにある。「王子様、」と無意識に呟くと、声を出して笑われた。 「王子? 僕が?」 「あ、や、……ごめんなさい」 反射的に謝るとますます笑われる。流石に笑いすぎではないか、と睨みつけると「ごめん、ごめん。僕はセドリック。ハッフルパフのシーカーさ」とキラキラした笑顔を向けてくるので眩しさに目を細めた。 120513 目次/しおりを挟む [top] |