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 上へ下へとせわしなく走り回っているとお母さんがクスクス笑う。「そんなに楽しみなの?」と言われようやく自分の落ち着きのなさに気付き、私室で大人しくしていることにした。

 約束の時間の二十分前になったところで暖炉の近くに置いてあるソファーに腰を下ろすと、お母さんも隣に座った。それから十五分と少し経ち、暖炉の中から灰を被ったハーマイオニーが出てくる。肩や髪についている煤を払うのを手伝っていると、お母さんはニッコリ微笑みハーマイオニーを歓迎した。畏まったハーマイオニーが日本語で挨拶と自己紹介をすると「本当に優秀なお友達なのね」とお母さんが褒めハーマイオニーはほっぺたを赤くする。

「ママは生粋の日本人だから、あまり英語は上手くないの」

 ハーマイオニーの荷物をお母さんが魔法で先に私の部屋に運び入れてくれたので、空となったハーマイオニーの手を引いて部屋まで案内する。魔女の部屋を物珍しそうに物色するハーマイオニーに、用意しておいたピンク色の大人っぽい着物を渡す。不思議そうな顔をする彼女に「明日のパーティーに、日本の民族衣装を着て行かない?」と言うと嬉しそうに頷いて模様を確かめるように何度も衣服を撫でていた。

「素敵な柄ね! これって着物っていうんでしょう?」
「そうよ。簡単な呪文をかけると藍色になる生地でできてるの」

 ハーマイオニーに簡単に着付けをしてあげてからお母さんを呼び、魔法で色を変えてもらったのだがハーマイオニーの肌と髪色にはピンクの方が似合っていたのでまた同じ魔法をかけて色を戻す。明日のパーティーは、ピンク色の着物とそれに合わせた小物を身に付けて行くことに決まった。

120428
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