*57 へえ、と相槌を打つジョージさんの手の中にある紐を拝借し、切り取った自分の髪と共に手の中に握る。 杖をゆっくり振りながら、息を吸い込む。 わたしわたし ささげます あなたあなた もらいます あわさったら すてきでしょ 民謡のようなメロディーに声を乗せると、髪の毛は少しずつ紐に吸収されていく。元通りになった紐を見て「わーお」と感心したような声を出し、右や左、はたまた下から覗き見るジョージさんの手に紐を乗せた。 「不思議な言葉だね。ヘンリーの母国語かい?」 「そうよ」 「なんでこんなに素晴らしい魔法を教えてくれなかったんだ」 「言う機会がなかったのよ。……あの、髪を使っているなんて嫌じゃない?」 尻すぼみになっていく言葉もきちんと聞いてくれるジョージさんにいたたまれなくなりつつ、言葉を紡ぐ。 「クリスマス休暇で実家に帰ったとき、近所の子に言われたのよ。髪は気持ち悪いって、それで、」 「僕が気持ち悪いと言ったか?」 「……いいえ」 「むしろ嬉しいよ。ヘンリーの一部ってことだろ?」 紐を括り付けたジョージさんの右手が、伸びてくる。避けることが出来ずにただその手を見つめていると、後ろから襟元を引っ張られた。首に布が食い込み息が詰まる。 「お楽しみのところ悪いね、お二人さん」 「……フレッド」 「突然僕を置いていったと思ったら、いちゃこらしていたのかジョージ」 「これからってとこでわざと邪魔したんだろ、フレッド」 ……喧嘩をする前に、首にある手を離してくれないだろうか。 120417 目次/しおりを挟む [top] |