*40 まだ十一月に入ったばかりだというのに息が白くなるほど寒い。日本でも同じくらい寒い地域はあるが、私の住んでいる街は年に一、二度しか雪の降らない比較的温暖な気候だったため、異常ともいえるイギリスの寒さにすっかり参っていた。 「ヘンリー、大丈夫?」 出来る限り体を小さくしていると、ドリトルさんの暖かい手が頭に乗せられる。思わずドリトルさんの手を握り締め頬に擦り寄せるとおかしそうに笑われた。「大丈夫そうじゃないわね。ほっかいろあげる」と手のひらサイズの密封された袋のようなものを差し出され、首を傾げつつ「ほっかいろ」を受け取ると熱いほどの熱が伝わってきて驚いた。いったいこれはなんだと問うとマグルの携帯暖房器具なのだと教えてくれ「日本で発明されたものなのよ」とドリトルさんは自慢気な顔をする。 ドリトルさんは決して頭が悪いわけではない。が、レイブンクローに頭の良い人ばかりが集まっているせいで劣等感のようなものがあるらしく、こうして尋ね事をすると嬉しそうに詳細まで説明してくれる。 こういう無邪気なところが彼女の魅力なのだろうな、とドリトルさんの横顔を見ながら思った。 120331 目次/しおりを挟む [top] |