*27 フレッドとジョージさんの言っていた新商品とやらを見せて貰うために早足で寮の階段を降りていると待ち構えていたかのようにサムくんがやってきた。 「ヘンリー!」 「どうしたの?」 「どうしたじゃないよ、これが悪戯ってやつか!?」 とても困惑した様子で「あっかんべー」をするサムくんの舌は鮮やかな黄緑色をベースに所々真っ赤な血管が浮き出ている。 サムくんの驚きようを見てあらかじめ説明しておけば良かったと反省はしたがクッキーの効果が上手く表れたことへの喜びの方が強かった。 「気に入らなかった?」 「気に入る気に入らないじゃなくて、驚くだろ! ……これ、ヘンリーが作ったのか?」 「そうなの、自信作よ!」 もっといる? とポケットから取り出したクッキーをサムくんに渡すと特に抵抗もせず受け取ってくれたので特別怒っている訳ではないようだ。 サムくんに挨拶をしてから談話室を出るとタイミング良く鈴木くんが歩いていたので彼にもクッキーを渡す。サムくんの二の舞にならないようクッキーの効果について説明しようしたのだが、突然瞼の裏に飛び込んきた映像に目が眩んで言葉が続かない。目頭を指で押さえると鈴木くんが心配そうに声を掛けてくれたのだが「ごめんなさい、用事があるの」と早口に告げると返事も聞かずにその場を立ち去った。 120318 目次/しおりを挟む [top] |