クィディッチ

 それは、眩いばかりに太陽が照りつける演習場で起こった。

 いつものようにレイブンクローのクィディッチチーム――仲間と一緒に空を飛んでいたはずなのに、なぜ私は地面に転がっているのだろうか。慌てたように私の名前を呼ぶ仲間に返事をしようとしたのだが、口からごぷりと赤い液体が溢れるばかりで指一本すらまともに動かすことができない。

「ヘンリー! ヘンリー!」

 泣きそうな顔で呼びかけるキャプテンを見て、少し前の出来事を思い出した。
 誰かが誤って私に打ちつけたブラッジャーが後頭部、続いて腹部にクリーンヒットしたのだ。理解した途端体は動きだし、不自由な体でお腹をさするとぬちゃりと気持ちの悪い感触がする。思った以上に重傷だと空笑いをした口から、また血が溢れ出た。

 どこが痛いのかも判断することもできない私の体は、三人の先輩の魔法によって丁寧に医務室まで運ばれた。医務室に着くと校医はすぐに鋭い指示を飛ばし私を治療していく。ズポッと、まるで底なし沼から杭を抜き出したかのような音が体を通じて伝わってきたかと思うと、腹部に信じられないほどの痛みが襲った。いっそ死んでしまった方が楽なのではないかというほどの痛みにもがき苦しむ私を助けてくれる人はおらず、むせび泣きながらジョージさんの名前を呼ぶ。痛い、痛い――痛いよ!

「大丈夫よ。すぐに痛みも引きますからね」

 励ますような声に目を開け、手を伸ばす。

「私……死ぬの?」
「いいえ、あなたは生きます。私が治してみせますとも!」

 迷いのないその言葉に、少しだけ安堵する。
 それから数秒もしない間に痛みは引いていき、意識は深い闇の中に引きずり込まれていった。

130116
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