*126 ヘンリーのことは極秘扱いされたが、フレッドに隠し事などできるはずなどなく、彼にだけは全てを話した。 「ヘンリーが死喰い人に? ……まさか」 「間違いない。この耳で、目でしっかり確認したんだ」 「だとしてもなにか理由があるんだろ。誰かに脅されたとか……」 「そんな雰囲気じゃなかった! フレッドは現場を見てないからそんなことが言えるんだ!」 理不尽に怒鳴りつける僕にフレッドは熱心に語りかける。ヘンリーは闇に落ちる女じゃない、それはジョージが一番よくわかっているだろ? ……フレッドの綺麗事に反吐が出た。フレッドに対してではなく、自分に嫌気が差したのだ。ヘンリーがおかしいことに気づいていたのに信じることができないなんて。 彼女を信じなければとは思うが、信じようとすればするほど疑ってしまう。今まで傍にいてくれたヘンリーそのものが嘘だったのではないかと考えてしまう自分が嫌だ。 ――どうしてあのとき、無理矢理にでも彼女を止めなかったのだろう。そうすればなにかが変わっていたかもしれないのに。 120928 目次/しおりを挟む [top] |