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 ついに恐れていた事態が起こった。一人の女生徒が秘密の部屋に連れ込まれたというのだ。もう殺されているに違いない、と噂されている少女は、レイブンクロー二年生。名をヘンリーという。
 帰宅準備をしろというマクゴナガル先生の言葉など耳に入らず、駆け込んだ部屋で漁りだしたのは古ぼけた羊皮紙だった。これがあれば彼女を見つけることができると思ったのだが、どこにもヘンリーの名前はなかった。

「どこに行く気だ」

 部屋の窓に足をかけた僕の腕を掴むのは、僕と同じ顔を持つ片割れだった。相棒とも呼べるその男の腕を掴み共にヘンリーを探しに行こうとしたのだが、彼は足を動かさない。

「おい、ヘンリーが危険な状態なんだぞ!」
「わかってる。でも地図にも載っていないのにどこを探すっていうんだ。……ヘンリーは、僕たちが探すことを望んでない」
「だったら見殺しにするっていうのか、――ジョージ!」

 彼女の恋人であるジョージこそ探しにいくべきだというのに、なぜ拒否をする。長年連れ添っている半身の考えていることが全く読めなかった。

「僕たちが探しても意味はない。それどころか被害が拡大するかもしれない」

 こんなときに冷静でいれるジョージに怒りがこみ上げる。きつく握り締めた拳で彼の頬を殴った。倒れるジョージの体がごみ箱にぶつかり、ごみ箱は大きな音と共に中身をぶちまける。
 フーッと威嚇するように息を吐き出し、ジョージの胸倉を掴みようやく気づいた。歯を食いしばりすぎたジョージの唇からは血が伝い、今まで見た中でも一番酷い顔をしている。
 一気に怒りが萎えて、手を離した。

120917
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