*119 ついに恐れていた事態が起こった。一人の女生徒が秘密の部屋に連れ込まれたというのだ。もう殺されているに違いない、と噂されている少女は、レイブンクロー二年生。名をヘンリーという。 帰宅準備をしろというマクゴナガル先生の言葉など耳に入らず、駆け込んだ部屋で漁りだしたのは古ぼけた羊皮紙だった。これがあれば彼女を見つけることができると思ったのだが、どこにもヘンリーの名前はなかった。 「どこに行く気だ」 部屋の窓に足をかけた僕の腕を掴むのは、僕と同じ顔を持つ片割れだった。相棒とも呼べるその男の腕を掴み共にヘンリーを探しに行こうとしたのだが、彼は足を動かさない。 「おい、ヘンリーが危険な状態なんだぞ!」 「わかってる。でも地図にも載っていないのにどこを探すっていうんだ。……ヘンリーは、僕たちが探すことを望んでない」 「だったら見殺しにするっていうのか、――ジョージ!」 彼女の恋人であるジョージこそ探しにいくべきだというのに、なぜ拒否をする。長年連れ添っている半身の考えていることが全く読めなかった。 「僕たちが探しても意味はない。それどころか被害が拡大するかもしれない」 こんなときに冷静でいれるジョージに怒りがこみ上げる。きつく握り締めた拳で彼の頬を殴った。倒れるジョージの体がごみ箱にぶつかり、ごみ箱は大きな音と共に中身をぶちまける。 フーッと威嚇するように息を吐き出し、ジョージの胸倉を掴みようやく気づいた。歯を食いしばりすぎたジョージの唇からは血が伝い、今まで見た中でも一番酷い顔をしている。 一気に怒りが萎えて、手を離した。 120917 目次/しおりを挟む [top] |