118

 ジニーちゃんに相談をされたのは、期末試験の始まる一週間くらい前だっただろうか。突然意識がなくなり、そのたびにおかしな現象が起こるのだと彼女は言う。自分を責めるジニーちゃんをなだめて詳しい話を聞く。おずおずと彼女が話したのは、返事をくれるという日記帳だった。
 躊躇う彼女に無理を言い、問題の日記帳を彼女から預かった。日記の持ち主の名前だけが書かれている、どこにでもありそうな赤い日記帳だ。
 寮に持ち帰り、愛用の水晶と日記帳を並べる。水晶に手をかざすと、煙のような白いもやが水晶の中に溢れた。

「……ルシウス・マルフォイ。確か、マルフォイくんのお父さんね」

 瞼の裏に飛び込んできた映像を脳裏に焼き付け、深く息を吐く。恐らくマルフォイくんのお父さんはこの日記帳の価値を推し量り間違えているのだろう。

「あなたが、リドルさんね。ジニーちゃんの魔力をどれだけ吸い取ったのかしら」

 コツンと杖で日記帳を叩くと、日記帳は独りでに宙を舞う。上へ下へと水を払い落とすかのようにパタパタと日記帳が動いたかと思うと、ハンサムな青年が現れた。
 驚いたように自分の手のひらを見つめている彼こそが、この日記の真の持ち主だった。

「おかしいな。実体化しようとなんてしていないんだけど」
「私が強制的に実体化させたの。……どうやればあなたを実体化させるのか知っていたわけじゃないわ、教えてくれたのよ」

 怪しげに眉を寄せるリドルさんは、どうやら私に興味を持ったようだ。静かに表紙を閉じた日記帳は吸い込まれるように私の手のひらにおさまる。

120915
目次/しおりを挟む
[top]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -