※捏造&世界観ぶっこわしてる可能性大!!夢主に設定有でちょっと長めのお話です。




とある日の出来事。


私、名無しは目隠し団に所属しています。

歳は20なりたて。皆の中ではお姉さんポジだけどキドにはかないません。
あの子は歳の割にしっかりしてるよ!!歳上ながら尊敬してる。

私がここに来たのは一年前。
元いた世界では若くで結婚して子供も居た。

世間からは冷たい目でみられてとにかく息苦しい日々だったけど…

ある夏の日…道路に飛び足した我が子の腕を引っ張ったが間に合わず、そのまま倒れこみ車に引かれて親子共々死亡。したはずなのに――。


気が付けばこの世界に来ていた。

ここの世界での私はどうやら歳も少し戻ってて独身みたい…。
否、1人だった。

死んだとばかり思っていた
暗闇をさ迷い続け蛇に出会い
目が覚めたら公園。



1人この状況に、静かにパニックになって蹲ってる所を優しいセトに拾われて今に至る次第です。

この事については話してない、皆には記憶がないで通してる。

キドが言うにはこの世界はカゲロウデイズと言うらしい。


それにどうやら私にも"目"があったらしく、それは「冷ややかな目で見る」能力。

見たもの全てを氷漬けにしたり
自分の周りに漂う冷気を操れたり、氷でいろんな物を造形できたりするのだ。

こんな能力なので危ない所への潜入には自ら先頭にたってる。

戦闘できるタイプ、とでも言っておこうか。

最初こそ一緒に暮らしてたが今では手に職もつけて別。
それでも毎日顔だしてますよ

だってマリーが寂しがるんだもの、なにあのかわいい子。

だけど入れ違いだった…セトとお散歩中みたい。


今はキドとカノの三人でまったりしてます。




「名無し、お昼食べるか?」

『食べるー!!』



キドが昼食の準備にかかろうとソファを離れ、エプロンをつけはじめる

そんな姿を反対側のソファに座りながら横目でチラッと見ては雑誌に視線を戻すと、ドサッと勢いよくカノが座ってきた。

ニヤニヤしてるぞ…コイツ
なにかあるな。


「ねぇ〜さぁ〜ん、出前なんてどうでしょう??」


数冊の出前表を目の前に突き出してきた。

なるほど、奢ってくださいだな?


『出前かー…いいよー』

「いよっしゃー!!奢り!?」

『最初からそのつもりでしょ』
そう言えば笑って誤魔化してくる。


「おいカノ!」


この間も奢ってもらったのに悪いだろ!って怒るキドだけど『いいのいいの』で宥める。


『このくらいはさせてよ、家族なんだからさ』


そう、たとえ血の繋がりがなくとも家族なんだから。
それに私には収入もあるし不自由はしてない。
皆の為に使えるなら本望だしね!


にっこり笑えばキドもつられて微笑む。カノは一瞬気が抜けて素になってたが直ぐにニコニコしてきた。

エプロンを外してキドもソファへ戻り、三人でどれにしようか話してると………





物凄い勢いでドアが開かれた。




「名無しさん!!名無しさんはいますかァァァァアア!?!?」

凄い形相だよ、シンタロー君…


『な、なに…どうしたの…??』

あまりの気迫に押されて顔が引きつった

そして私と目が合うなり持って来てた荷物を置くと、両肩をガシリと掴んで

「お願いします!!助けてくださいイイィ!!」

なんて言うもんだから焦った。
なにか大変な事が起きたのか!?と。

すると1分遅れくらいで妹のモモちゃん登場…………え、登場、したけど……………は???


『どうしたの、その赤ちゃん…』


帯に縛られて抱っこされてる赤ちゃんは今にも泣きそうだ…


「し、親戚の子を半日預かってるんですけど…言葉がないからどうしていいかわからなくて…」

相当悩ませられたのだろう、シンタローもモモもぐったりしてた。シンタローの携帯からはエネちゃんがおろおろしてる。


そしてやっぱり母性本能からか
すぐにモモちゃんから赤ちゃんを受け取ると横抱きにして顔を覗きこむ。

男の子だ、かわいぃなぁ…


『この子、何ヵ月??』

「えっと、6ヶ月です!!」

額に滲む汗を拭い答えるモモ。


『そっか…』

と呟いたとたん、

ビェェェェン!!!!と部屋中響き渡る声量で泣きはじめた。

カノもキドもあまりの大声に耳を塞ぎ、

シンタローとモモちゃんはまたかぁ…といった表情。


『よしよし、大丈夫だよ〜どちたのかなー?』


優しく揺さぶり背中をトントン叩く。

よくみればオムツがパンパンじゃないか、匂い的に…でてますね。
そりゃ泣くわな


『モモちゃん、オムツとおしり拭き頂戴。あとキド、座布団か膝掛けみたいなのある?』

「はい!!」

「あ、ああ…小さい布団あるからもってくるよ!」

そう言って走って自室に行くとお昼寝に最適な長方形の小さい布団を持ってきてカノがよいしょとテーブルをどかせば床に敷いた。

泣きじゃくる赤ちゃんを宥めながら寝かせ、つなぎになってる服のボタンを外す。


『………見たくなければ後ろむいてなさいな』


さすがに匂いで気付いたのか、なんともいえない表情の一同。

そう言えば全員が後ろを向いた


『すぐ綺麗にしてあげるねー』

にっこり笑いながらてきぱきとオムツ交換をすませボタンを留めてオムツをビニールに包み縛る。
赤ちゃんを抱っこして台所のゴミ箱へ捨てるとさっきまでの不機嫌はどこへやら、すっかりご機嫌な様子でキャッキャと笑う赤ちゃん。


『…終わりましたよ』

一斉に同じ方向むいてる4人と画面を暗くしてるエネちゃん…この図は…笑える。


「あ、ありがとうございました…」

ふぅーっと大きく息を吐き、お礼を言うシンタロ―。


「にしても、ボクはてっきり君に隠し子でもいたのかと思ったよ」

ケラケラ笑いながら顔を覗き込むカノに真っ赤になりながら
「違うぅぅ!!」っと全否定。


「……」

名無しの腕の中で無邪気に笑い、長い髪を掴んで遊んでる赤ちゃんをじっと見てるキドの視線に気付いた。

『…抱っこ、する?』

「えぁっ…いや…」




照れるキド、かわいいぞ。

抱っこの仕方を教えると赤ちゃんをキドへと渡す

一瞬誰?みたいな表情になるものの、すぐに笑いだした。


「…か、かわいいな…」
「団長さん、おかあさんみたい」

ふふっと手を口に持っていき微笑むモモに「今度はボクも!」
とカノが挙手してきて順番に抱っこして、それからは持ってきていたバックの中にある
おもちゃなどで皆で遊んでた。

赤ちゃんも皆も笑顔が絶えない、

…今頃、どうしてるのかな…。

ふと思い出したこの世界に来る前の事。

小さくズキッっと痛む胸に少しだけ顔を歪ませてると…




「んーんまんま!」


『…!』


皆と遊んでた赤ちゃんが私に寄ってきて小さい手をこれでもかと伸ばしてきた…。


「ママ?ままって言ったの今!?」

カノが「おおお!」と一人びっくりしてると周りの視線も私に集まる


『…っ』


「?どうしたんだ」


ママ…その言葉につい顔を俯かせてしまう…ヤバイ…泣きそうだ…。


そんな私の行動に心配するかのようにキドが寄ってくる。

ジワリと浮かんだ涙をささっと拭うと赤ちゃんに満面の笑顔を浮かべ、


『よーし、今だけ私がママだよ!!』

そう言って抱き上げた。


まだはっきりとした言葉にはなってないけど、頑張って覚えたんだよね。


するとあれだけ元気だった赤ちゃんも私の胸に顔をうずめはじめる。


「あっ…ちょ…」

そんな行動に一番先に反応を見せたのがシンタロ―。

また顔を赤く染めておどおどしはじめた、初々しすぎるぞ


「いいなぁーボクもうずめy」

カノが羨ましそうに言うものの途中でキドの拳により言葉が遮られた…。


「変態!!」


「あの、名無しさん…おとなしくなっちゃって大丈夫でしょうか…?」

具合でも悪くなったのかなと困った顔をするモモだけど、大丈夫…これはね。


『ミルク飲みたいし、いっぱいあそんだから眠いんだよ』

ふと時計をみるとお昼の3時、お昼寝時だね。

『モモちゃん、預かったその荷物の中にミルク入ってる?』

そう言うなり、「ありますよ!」っと小分けにされた粉ミルクと消毒済みの哺乳瓶が出てきた。


「あ、でもこれどうやったらいいか…」

『私やるから、赤ちゃんみてて』

そう言って赤ちゃんをキドに任せると台所へ向かいミネラルウォーターをポットに入れ火をかける。


それからの手順もぱっぱとこなすもんだから興味津々にシンタロ―がひょこっと顔を出して隣に並んだ。


「名無しさん、こういうの慣れてますね?」

『…』

子供のお世話とかしたことあるんですか?と聞いてきて一瞬手が止まるも


『うん、就職する前、ちょっとバイトでね!』


そう言ってごまかす。


言ってしまえばきっと、皆に心配かける。


「へ〜そうなんですか!やっぱ頼ってよかったです!」

流石ですね!っと言って普段あまりみせない笑顔なシンタロ―にずいっと冷ましてた哺乳瓶を渡した。


『…手に少し垂らしてなめてみて?』

「……は?!///」


いや、なんでそんな恥ずかしがる…。


『このまま飲んだらやけどしちゃうでしょ?ひと肌の温度まで下げるの、どんなもんか確かめて』


「は、はい」


そう言って手の甲に一滴たらしてなめてみる、なんだか懐かしい味がした。


「…温くていい、かんじ?」

『ん、じゃあおっけーだね』


哺乳瓶を受け取り皆の元へ戻るとソファに座り、赤ちゃんを受け取れば
まってましたといわんばかりに吸い付いてきた。


「やっぱお腹空いてたんだねー」

ニコニコしながらカノが赤ちゃんの頭を撫でると向かい側のソファへ座り大きく欠伸をした。


「お腹空いたけど…遊び疲れて眠いー」

あ、そういえばすっかり出前の事忘れてた…。


『…キド、お昼は諦めて夕飯。皆になんか出前とってあげて』


そう言って渡そうと思ってポケットに入れておいた一万を出して渡せば「ああ、お言葉に甘えさせてもらうよ」

ありがとうとお礼を言ってうけとると出前表を取り出し人数と金額の計算をし始めた。


『おつりはいらないからあまったら食費にでもしてね』

「いや!それはさすがに…」

名無しを合わせてキドにカノ、セトにマリーとシンタロ―とモモを合わせてもおつりは結構でる。

『いいのー』

笑顔。それさえ向ければキドはそれ以上言ってこない

「…なら、そうさせてもらうよ」

負けた…そんな思いが混じりつつも微笑んだ。


各々やっぱり疲れたみたいでさっきまで騒いでた空間もシン…っと静かになってる。
ソファに座ったり床に座ってソファによりかかったりと、それぞれ楽な体勢になってくつろいでいた。


するとお散歩に出かけてたお二人が帰って来る


「ただいまーっす!」

「ただいま〜」


玄関で聞こえた声。

カノもシンタロ―もモモも眠っていて、ミルクを飲み終わった赤ちゃんもげっぷをさせてあげれば名無しの腕の中でスヤスヤと眠っている。

ひざ掛けをかけて座っているので身動きのとれない名無しの代わりにキドがそそっと出ていき玄関に居るであろう二人に事情を説明しに行ってくれた。

数十秒して部屋に入ってきたセトとマリー。

キドは出前所に電話してくると言って玄関を出ているそうだ。



「名無し…」

「わぁー…赤ちゃんだ…」


腕の中で気持ちよさそうに服をしっかり握って眠ってる赤ちゃんをみて
マリーはめずらしいものをみるような目で、でもしっかりとボリュームを下げてそっと覗きこんできた。

セトはというと…あれ? なぜに顔が赤い…?


『セト…?』

口元を手で隠し、瞳を大きく見開いてるセトを小さく首を傾げ名前を呼ぶ。


「あ、いや…なんていうか…その姿、絵になるっす…///」


てれながらへにゃりと笑うセトにつられて微笑む。

『そうかな、ありがと』

お礼をいうとしゃがんでるマリーに空いてる片手で頭を撫でる


『おかえりマリー、まだ寝たばかりだから起こさないようにね』

撫でられて嬉しいのか、「うん!」と言えば物音立てないように名無しの左隣にそっと座り、セトも続いて右隣にそっと座って眠る赤ちゃんを見た。

「かわいいーっすね」

『赤ちゃんの寝顔は天使だよ』

「天使…!」
小さく小さく、ボリュームを下げながら会話していると出前を頼み終わったのか
キドが部屋に入ってくるなりピタリと動きを止めた。


『…キド?どうしたの』

「いや…なんていうか…お前らがそうやってならんでるとだな…」

次第に頬が赤く染まっていき、口をもごもごしだす

「ならんでると…?なんすか?」


「…お前がお父さんで名無しがお母さんでマリーが娘でその子が弟みたいにみえる」


そう言うなりゆっくり扉を閉め、リビングにある椅子に座った。


「!?//////」

「家族だねー」

『!!』


マリーがこれまた幸せそうに微笑むもんだから私もつい頬を染めてしまう。

セトは・・・・皆さま察してる通り、もう頭ん中爆発状態でプスーっと煙が見えてます



…それから数時間が経ち、赤ちゃんが起きるともう一度オムツを取り替えて
皆を起こした。

シンタロ―もモモも少し寝て疲れがとれたのかな、来た時よりはスッキリした表情だ。


それから届いた出前を皆で食べて、一休みすればもうすっかり日は落ちて夜を迎えた


『私、送ってくよ』

「え、いいですよ!むしろ今日ほとんど任せっぱなしで疲れてるでしょうし…」

歩いて帰るからと言うシンタロ―だがそこは拒否。

『赤ちゃん連れて夜の道歩くのはダメ。今日車で来てるから、送るよ』


「なにからなにまですみません」なんて今更他人行儀みたいに言うもんだから
笑いながら行くよーって連れ出した。

「俺も行くっす」

そう言って大きな荷物を持てば続いて家を出る

下に止めといた車のエンジンをかけ、後ろの席に二人をのせ、モモに赤ちゃんを任せる。
助手席にはセトが座った。

『本当はチャイルドシートないといけないんだけど、とりあえず抱っこ紐でちゃんと固定してしっかり抱きかかえてシートベルトしてね』

「はい!わかりましたー!」

兄のシンタロ―に手伝ってもらってなんとか装着できた所で出発。

車の中でも元気にはしゃいでた赤ちゃんに皆で微笑みながら進めば暫くして
如月家に到着。
家の前に車を止めればエンジンの音でか、中から人が出てきた。

「あ、おばさん…」

『その子のおかあさん?』

そうですと答えるとすぐにドアを開けておばさんと話すシンタロ―に続いて
ハザードをつけて出る一同。


こうゆうわけでと事情をはなしていたらしく、そのおばさまは私に何度もお礼を言ってきた。

赤ちゃんもすぐおかあさんの元へ行けばやっぱりお母さんに見せる笑顔って違うよなぁなんて思いながらみてると赤ちゃんが私をみて腕を伸ばしてくる

「おねぇちゃんが大好きなのね」


抱っこはせずに優しく頭を撫でてあげればにっこりと笑ってくれた。


『…またね、』

そう言うとわかっているのか、少し悲しそうにしだして耐えられなくなり、周りに挨拶をすれば『車止めたままだから』と言って一足先に戻る。


あぁ…これは辛い。


そんな事思いながらズキズキと痛む胸を服の上から握りしめればセトが入ってきた。

見送りするからと言っていたそうだが、赤ちゃんいるから家入ってくださいと言って断ったと説明してきたので頷く


『…いこうか』


言うなり車を発進させた。


暫く走りキド達の待つアジトまであと半分の距離って所でずっと黙ってたセトが口を開き…


「なにかあったんすか?」


運転してるから彼の顔が見れない、だけど今の私にとっては好都合だった。


『…なんでもないよ』

無理にでも笑ってみる、でもわかってる。
こんな小細工、彼には通用しないんだ…


「そんなんでごまかせるとでも…?」


『っ…じゃあ、“見てみればいい”』


その目で。




「………」




……言ってしまった…彼は自分の力を嫌っているのを知っている、なにをしてるんだ私は…。


どうしようもない感情をセトに奴当たってるなんて…最低。


セトは暫くまた黙ってしまった。目の前は信号、赤なので止まる…


すると腕を掴まれてぐいっと寄せられた…


『っ…!?』

「じゃあ、見るっすよ?」


今までに見たことないセトの静かな怒り…、

顔が近くて綺麗な顔立ちに心臓がドクンとはねあがる。
目が離せない…
すると次第にセトの目が赤く染まっていく…。



いや…嫌だ…!!


『ダメっ…!!』


「うっ…!!」


我に返ると咄嗟に自分も力を使ってしまったみたいでセトの顔の一部が氷の膜で覆われてしまっていた。
ヤバいと思い、青信号になった所ですぐ近くのコンビニの駐車場へ止めれば痛がるセトの顔に急いで手を触れるとみるみる氷が消えていく。


この力は、凍らす事もできれば自分で溶かし消す事もできる。



『ご…ごめんなさいっ…セト…!!大丈夫!?』


少し赤くなってしまった皮膚に触れていると、手首をつかまれそのままセトの胸に引き寄せられた。


「…大丈夫っす。俺こそ…ごめん」


『私こそ…あんな事言って…嫌がってるのわかってるのに…ごめんなさい』


涙があふれて頬を伝う――…。
ポタッっと落ちればセトの服に染みていった


「誰にも言いたくない事、なんすか?」

お互い表情は見えない。

セトは私を抱きしめ、されるがままの私はセトの胸の中でそっと目を閉じる。


『…うん、でも…セトには少しだけ話すね…。
…私本当は記憶喪失なんかじゃないの、
色々ありすぎて…現実を受け入れられなくってさ…』


皆と出会う前の頃の話は…やっぱりできない。


そう言うと一層強く抱きしめた後、ゆっくり腕を解いて今度こそお互いしっかりと顔を見た。


「無理に今話さなくてもいいし、これからも話さなくてもいいっす。
名無しとの出会いはあれが最初で初めの思い出。
俺達の思い出はこれから先もいっぱいあるから、これからを大事にしていこうっす!」


そういって笑った。


『…そう、だね。そうだよね…いつまでも後ろ向いてたらダメだよね』

あの頃の記憶は大事にしまっておけばいい。
今はここに居て、皆が居て、目の前にセト―――

…これからはこの人たちとの思い出を、記憶を大事にしていけばいい。


「…自己解決…したっぽいっすね」

スッキリした顔をみて安堵感に包まれるセト。
『セトのおかげだよ、ありがと』


「ッ…あの…ね…その笑顔、反則っす」


『?』


精一杯のお礼を込めて笑ってみたけど途端に顔をそらしてしまう


「あ、丁度コンビニに来たし!アイスでも買っていこう!」


そう言うなり一人車から出て店内に入っていった。



『……』



なんか今日のセト、よく顔が赤く染まるなぁ…


なんて思ってると買い終えたのか、膨らんだビニール袋を持って出てくる。

車内に入ってシートベルトをつけたのを確認すれば車を発進させ、他愛ない話をしながらあと少しの所でセトが驚きの発言をしてきた。




「名無し、明日仕事っすか?」

『え?明日も休みだけど…』

今日と明日二連休なの、と言えば……



「じゃ、今日そっち泊まりに行っていいっすか?いや行くっすけどね」

俺一人で、と付け足すとニヤリと笑った。




『は…えぇ!?』

「氷漬けにされた所痛いっす…」

『う…それは…』

「じゃあ…」


『…わ、わかりました…』


なんだろう…いつもは一緒に居てもなんとも思わないのに…
抱きしめてくれたのだって…セトは優しいから、そんな彼の表現の一つなのかって思ってたけど…な、なんだろう…もしかして私…。

恋とか愛に疎いわけじゃないけど…まさか…私、セトの事…。



その後、アイスを届けたセトがニコニコしながら車に戻ってくる。

『ね、ねぇ…一つ聞いていい?』

「ん?なんすか?」

『もしかしてさっきのアイスって…』

そこまで言うとにっこりと笑う…いやいや怪しいですよセト君、その笑み。


あー…餌ですね、アイスでもあげとけば快く送り出してくれるだろうっていう、ね。


『なんというか…やりますね、セトサン』

「なんの事っすかー?」


あくまでも隠し通すつもりですか、そうですかそうですねもう何もききませんよ。


セトを乗せ車を走らせることしばしば…自宅のアパートにつけばセトさんはこのあと…
狼になりました――――。



〜その頃アジトでは〜

「セトはようやく行動にでたか」
「ボク達をアイスで釣るなんてセトらしいよねー」

「ね、ねぇ…それってどういうこと…?」

「マリーは気にしなくていいよ」

「??」

セトが名無しを好きな事はマリーとシンタロ―以外皆知ってて
なかなか行動にでないから突然

「今日泊まってくるっす!!」

なんて笑顔で言ってはアイス置いて足早に出て行くものだから
「「やっとか」」と内心思うカノとキドだった…。


「そういえば、モモちゃんから聞いたんだけどシンタロ―君も名無しちゃん好きみたいだよキド」

「!!…そうなのか…ま、今回ばかりは…セトの勝ちだな」

「だねぇー、セトああみえていざという時はおおかy」

「マリーの前だぞ自重しろ!」


本日二度目の拳が飛んできましたとさ。





―――――


「好きっす…名無し」

『…私も…好き…だよ、セト』



思い出はこれから

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