「今日で高校生活も終わりだね」

「そうだね…」



今日で千鶴は高校を卒業する。
しかし、千鶴は素直に喜べない。
大好きなお千と別れてしまうのが辛いからだ。



「どうしたの千鶴ちゃん?」

「あ、何でもないよお千ちゃん」



友達に心配をかけてはいけないと思い慌てて何事もなかったように振る舞う。



「お千ちゃん、卒業しても私たち友達だよね?」

「何言ってるの千鶴ちゃん!当たり前じゃない!」



お千は千鶴の両手をぎゅっと掴む。



「私たち、何があっても友達なんだからね!」

「ありがとう」



千鶴はお千に微笑んだ。
その笑みを見てお千もにかっと笑みを返した。

その時、



「雪村さーん」



声のする方を見ると千鶴とお千の担任の沖田が職員室の窓から顔を出しこちらに
手を振っていた。



「沖田先生」



沖田の顔を見た瞬間千鶴の顔がパッと明るくなった。


「鈴鹿さん、ちょっと雪村さん借りていいかな?」

「全然いいですよ」

「ありがとう。雪村さんちょっと社会科の資料室来てくれるかな」

「あ、はい。じゃあまた後でね、お千ちゃん」



千鶴は慌てて校内に入る。


* * *

「先生、雪村です」

「入っていいよ」



入室の許可を取り中に入る。



「千鶴、おいで」

「…っ」



急に変わった呼び方に思わず萎縮するもとことこと沖田に近寄る。



「いい子だね」



沖田は近寄ってきた千鶴をすっぽりと自分の中に招き入れた。



「先生、ここ学校ですっ」



千鶴は沖田の胸に顔をすりつけ赤くなった顔を隠す。


「あはは、今日から僕たちの関係はバレても問題ないんだよ?ほら千鶴、顔見せて?」



沖田はそう言うと千鶴の顔を上げさせる。



「っ!」



顔を上げた時、沖田との顔の近さに思わず顔をそらそうとする。
しかしそれは沖田の手により叶わなかった。
千鶴の唇には沖田の唇が触れていた。



「ん…」



触れるだけのキス。
千鶴は何となく物足りなく感じた。



「そうそう、卒業祝いにこれ…」



沖田はズボンのポケットから封筒を取り出し千鶴に手渡した。



「……これは?」



手中にある手紙と沖田を交互に訝しげに見つめた。



「だから僕からの卒業祝い。中見てみて?」



頭にはてなを浮かべている千鶴はゆっくりと封を切り中を覗き込んだ。
中にはメッセージカードと一枚の紙が折り畳まれて入っていた。



「後で返事聞かせてね…?」



そう言うと沖田は資料室を出た。
返事が何なのかよく理解出来ない千鶴はとりあえずメッセージカードを開けてみ
ることにした。



『卒業おめでとう。これからもよろしくね』



「ふふ」



いつも手紙や文字で思いを伝える事のない沖田がメッセージカードを書いたと思
うと思わず笑みがこぼれた。



「えっともう一枚は…」



もう一枚の折り畳まれた紙を広げる。
千鶴は口元を押さえた。
左側には沖田総司と署名され丁寧に生年月日や判が押されていた。
それは一生添い遂げるという事を誓う証の紙。



「っ先生…」



千鶴はそれを胸の前で大切に抱えた。







一週間後。
横に千鶴の名前が書かれたその証は沖田に手渡された。
誓いの口付けと共に。




恋人から成長します




―――
沖千企画に参加させていただきました!
沖千好きの私にはすっごく嬉しい企画で他の方々の作品を拝見するのが楽しみです!
トノコ様、この度は素敵な企画を考えてくださりありがとうございます。
どんどん沖千loveの輪が広がる事を楽しみにしてます^^
ありがとうございました!

20110306


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