「今日はここにするか」
歳三は場所を見つけ背中に背負った箱を下ろした。
下ろした瞬間に群がってくる人々。
「歳三様〜一袋下さい〜!」
「私は四袋!」
飛ぶように売れていく石田散薬。
それを横でじと目で見つめる総司。
「あーあ、着いて来なければ良かったかな」
「最初からそう言ったじゃねぇか。大体何が目的で着いてきやがった」
あっという間に完売したようで歳三は箱をまた背負った。
「そのインチキな薬が毎回本当に綺麗に全部なくなってるのか気になっただけですよ。ほら行きますよ」
「てめぇ!インチキってのはどう意味だ!」
俺の実家に謝れと怒鳴っている歳三をよそに総司はにこよかに先を歩いた。
「あ?どこ行くんだ?」
「着いてくれば分かりますよ」
歩いていくと変わっていく街並み。
そこは一軒の三味線茶屋だった。
「何の真似だ…?」
歳三はその三味線茶屋を見た瞬間、眉間に皺を寄せた。
「土方さんって確かお兄さんの影響で三味線がうまいんですよね?是非僕にも聞かせて下さいよ」
歳三はその言葉を聞いて更に眉間に皺を寄せた。
「誰から聞きやがった…というより別に"ここ"じゃなくたっていいだろーが」