丸い眼鏡をかけたいかにも知識人に見える男は歳三に言う。
「ちっ」
より一層眉間に皺を寄せ歳三は再びご飯を食べ始める。
「千歳さんも本来女性としての品格を持ち合わせていなければいけない年で
す」
「すみません山南さん」
山南敬助。
流派は北辰一刀流だ。
最近他流試合に挑み勇に敗れた。
その際勇の人柄と腕前に惚れ込み試衛館の門人として住み込んでいる。
千歳は山南が悪い人物でない事を理解してるが苦手意識を持っていた。
「ごちそうさまでした」
千歳はお膳を下げようとする。
「あー千歳ちゃん!それ食べねぇなら俺にくれ!」
「あんまり食べると食あたりになりますよ」
千歳は苦笑しながら筋肉質な男に皿を渡す。
「新八が食あたりになることなんてねぇだろ」
「ちょっ、土方さん。そりゃねぇよ!」
こちらは永倉新八。
これも最近食客として仲間に加わった。
松前藩の出身だが剣の修行のために脱藩までした強者だ。
「いやぁしかし千歳ちゃんの飯はうめぇな」
「え…」
新八の一言でその場の空気が止まった。