「あぁ」
千歳はやっと帰れる安心からかその男の不気味な笑みには気が付かなかった。
「ここだよ」
「え、でもここは…」
しばらく歩き着いた所は道場ではなく民家のような場所だった。
「ここじゃない?」
「いえ、違います」
男の笑みにだんだん違和感を覚え始めてきた千歳は後ずさった。
「知らない人に着いてっちゃダメだよ」
にやりとした男は千歳の腕を掴み家に引っ張り込んだ。
「っ!」
* * *
「遅い」
歳三はイラついたように部屋をぐるぐる歩いていた。
「まぁ、土方さん…千歳なら大丈夫ですよ。だから落ち着いて下さい」
「落ち着いてられるかよ!」
イライラしてしょうがない歳三は怒鳴る。
その時。
「た、大変だ!歳さん、千歳が誰かに連れ去られた!」
広間に入ってきた源さんは珍しく声を張り上げた。
「あ!?」
「先ほど玄関に置いてあった文にそう書いてあった」
源さんはその文とやらを歳三に差し出した。
「くそったれが…っ」
「……土方さん!?」
歳三は怒りのあまり文をくしゃっと握り潰し総司の声も無視し勢いよく表へ飛び出した。