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2010/07/11 15:59
神威と神楽

神威と神楽

読む前に
・以下の小説は二次創作です。
・神威×神楽では断じてありません。
・ただの兄妹愛です











「神威と神楽」


アイツが家を出て行った。

俺が古い夜兎族のしきたりを、親殺しを、実行したから。
腕をもぎ取ってやった。
だけど、それだけしかできなかった。
不覚にも、いや、実力的に、俺はまだアイツに及ばなかった…。
アイツは家族を棄てた代償に力を得たんだ。
もし俺の妹………神楽が闘いを止めなかったら、本能で戦い始めたアイツに俺は確実に殺されていただろう。

俺はアイツが気に食わなかった。
家族を放って、好き勝手にハンターなんぞするアイツが大嫌いだった。
だけど。
俺が勝って、もし、アイツが負けたら、そうしたらずっと、神楽の…この子の傍に父親という存在を置いていられるのにと、そう思っていたんだ。

横で真っ暗な空を見上げていた神楽が俺の裾を引っ張った。

「にいちゃん」
「ん?」
「パピー…またどっか行っちゃったアル…」
寂しそうに、空を眺めたままの神楽は呟いた。
アイツは…、また出て行った。
片腕を失ったままで、また俺達を残して出ていった。
「…俺のせいかな」
神楽のためにと思ったことなのに、神楽に恐ろしい思いをさせてしまった。
きっと、もうアイツは戻ってこない。
それなら…俺が連れ戻すしかないんだろう。
アイツが出て行ってしまった原因は、俺に違いないんだから。
「にいちゃん」
「なに?」
「にいちゃんは、行かないよね?」
不安。焦燥。哀願。願望。
神楽の瞳に俺の姿がうつっている。
「…どうしてそう思ったの」
神楽は恥ずかしそうにもじもじと言った。
「だって、かぐらのにいちゃんだもん…」
ああ。
やっぱり。
俺は、馬鹿だ。
俺は神楽の頭に手を置いて笑った。
やっぱり連れ戻さなくちゃ。
アイツを、あの馬鹿親父を。
どんなことをしてでも、絶対に。
「どこにも行かないよ」
神楽は疑うこともなくその言葉を信じて、飛び上がって喜んだ。
「にいちゃん、あたま」
神楽は手を伸ばし背伸びをした。
少しだけ身をかがめてやると、神楽は手袋をした小さい手で「にいちゃん、ヨシヨシ」と俺の頭を撫でた。
「ありがとう、神楽」
それと、ごめんね。
もう少しの辛抱だよ。


2009/12/1

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