ユリアン、フェザーンへ

事が加速し、本来あるべき未来を狂わせる事態は、ゆっくり起きようとしていた。
カーチャルが皇帝が同盟に来た、いや亡命したと聞いたのは全国放送でだった。
これで帝国は自由惑星同盟に皇帝誘拐を着せ、正々堂々攻める準備が出来たわけだ。
しかも、メルカッツを銀河帝国正統政府の同志扱い。いい度胸だ。ラインハルトの蒔いた疑惑の種と言うわけだ。
帝国では生後間もない女帝が誕生し、さぞラインハルトの立場は上がったことだろう。
しかし、それだけでは終わらない。
ユリアンがフェザーンに送られると聞いたカーチャルは、トリューニヒトの顔を思い浮かべ立ちくらみを起こした。

「フレデリカ、ヤンは許したのか?いや、軍人ならユリアンは行くべきだ。しかし、心から受け入れたのか?」
「かなり躊躇っていらっしゃる様子でしたわ。心配して当然ですもの。」

カーチャルはフェザーンと帝国が手を組んでいた際、ユリアンが無事でいられるか、そこ以外考えていなかった。
ユリアンを送り出す際に何を言うべきか。彼女はそこに頭を抱え込んだ。
下らない戦術より役に立つ戦術か。それとも物を与えるか。
悩んでいるうちにその時は来た。

「ユリアン、フェザーンに行くんだな?」
「はい、命令ですから。もし、僕が軍人じゃなければいきませんよ!でも僕は軍人になると言ったんだ」
「・・・人生そう上手くはいかない。やりたくないことばかりさ。しかし、ユリアン
。今回ばかりは確かに不愉快だ。フェザーンが帝国と手を組んでいたら、危ないからな」
「どういうことですか?」
「戦略からフェザーンは上がらないが、フェザーンにしたら戦争も商品。回廊も商品」
「・・・ヤン提督と同じことをいうんですね」

ヤンと同じ思考。カーチャルには有難い話だ。その方がいい。嫌な血筋と同じ思考より。

「これを持っていきな」
「これは・・・レーザーナイフ」

カーチャルが常に持ち歩くレーザーナイフだった。
あの日、ヤンと出会った日。持っていたレーザーナイフと同じである。
こんなものが役に立つとは思わない。
気休め。彼女が自分自身のために気休めで構わないから、ユリアンに渡したかったのだ。

「このナイフは今度返しますね。ヤン提督のこと、頼みます」
「フェザーンのデータよろしく」

二人は互いに頭を下げた。
ユリアンがこのレーザーナイフをこれから先返すことはなかった。
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