腐敗する世

少年は空を見上げ、自分が成そうとしていることを思い返す。
それがよいか悪いか、少年には理解できないが、少年にはよいかもしれない。
しかし、うろたえているのか、その手は震えていた。
その震えている手を上着のポケットに入れ歩き始めた。
処女神の首飾りを破壊され、クーデターは失敗に終わった。
クーデターはローエングラムによるものと言われ、救国軍事会議は終わったのだ。
少年は足を早めた。若さがそうさせる。自分を変えることより環境を変えたいと。
誰かが少年をつけ回していた。
少年は恐怖から振り向くことをせず、冷静さを失い歩き続ける。
やがて少年は袋路地に誘われたことに気づき、振り返らざるおえなかった。
そこには長い黒髪の男が立っていた。

「き、貴様何者だ!」
「それはこちらの台詞だ。胸ポケットにブラスターを入れてどちらまで?」

少年は目を泳がせたが、威勢よく叫んだ。

「何を根拠に!」
「上着の胸ポケット部分が下がっている。肩もだが。何もないなら、確認してもよろしいかな?」

少年は躍起になり胸ポケットからブラスターを取り出した。
発砲より早く男は少年の手からブラスターを引き剥がし、羽交い締めにした。
男は変わらない口調で告げる。

「まだやる気かな。なら右腕を脱臼させるしかないな」
「・・・わかった、もうしない。許してくれ」
「ほぉーハイネセンであんな真似をした軍人が、市民にブラスターを向けられ許すと」

少年は男の脅しに顔を青ざめた。
男が言ったのはジェシカ・エドワードの巻き込まれたあの事件のことだ。
少年は死を覚悟し、目を閉じた。
その時、少年は腕が自由になったことに気づいた。

「どこにでも逃げな。他の軍人にはこうはいかない。二度とやらないことだ。」

少年は男の顔をしっかり見ることができないまま、走り去って行った。
男は頭を掻きながらため息をつく。

 
ヤンはカーチャルと合流をハイネセンで果たした。互いに無事なことを確認しあい、カーチャルはヤンを暗殺しようとしていた少年の話をした。

「何もしてないだろうね、カーチャル准将」
「あぁ、ヤンかどうかは知らないが、多分お前さんだ。ともあれいい訓練だった。気配を消す尾行は出来るが、気配を出す尾行はやる機会がないからな。しかし、少年がブラスターなんぞ物騒だな。
おおかたメンテナンス最中に奪ったんだろう」
「怪我させなかっただろうね?」

ヤンからしてみれば素手で勝ってきたカーチャルが一番物騒である。
面倒な山が一段落し、二人はしばらく平穏であることを願った。
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