私的な会議

「やってられるか、こんなやつ。こんなことなら亡命なんかするんじゃなかった!帝国軍よ、イゼルローン要塞に来るがいい」

カーチャルが言った事態が実際起きたのは少し先であったが、本人には嬉しいかぎりだった。
それはヤンにとっても同じことだった。まぁ辞表を出せなかったのは不運なことだが。
カーチャルが建物を出て真っ先にヤンを見つけ飛び付くと、ヤンはそれを快く受け入れた。
このときは女帝より少女が似合うように思われた。

「食い物には不自由しなかったが、自由意思には不自由したよ。
なんだ、あの集団は。どこかの貴族と同じだな」

カーチャルはフレデリカが迎えに来ていることに気付き、ヤンを放置したまま駆け出した。
ヤンは放置されたことに、少しふて腐れてやろうと決めたが意味はなかった。本人は見ていなかったから。
 
女帝はヤンの護衛もしつつ、ガイエスブルク要塞を持ってイゼルローンに挑んだと聞くと、複雑でならない。
ガイエスブルク要塞のデータを提供すべきか、しないべきか。
女帝がしなくてもメルカッツがするだろうから意味はないが。

「移動式要塞とは素晴らしい発想だよ、バカでかいあれを。失敗したら凄い損害だ」
「失敗したら、そこまでと考えているだろうね。
それよりカーチャル准将、ガイエスブルクについて、知っていることはあるかい?」

カーチャルはしばらく黙ったが、メルカッツが言ったのかと舌打ちをした。
それを見たヤンは慌てて謝る。

「いや、その・・・メルカッツ提督には言わないでくれないかな。ごめん、忘れてくれ」
「質量四〇兆トン。イゼルローンより小さいですが艦はかなり収容できます。ちなみに私の考え通りならワープさせるならワープ・エンジンが一二個は必要です。」
「カーチャル准将、そのしゃべり方は似合わないね。君らしくない。
それにガイエスブルク要塞についてのデータを渡す気がないように思えるよ」
「最悪なことにあの要塞はこの前の貴族連合が拠点にしてました。」
「それは最悪だ。で、君の予想では誰が指揮を?」

彼女はすぐに出てきたが、確信が持てずにいた。
しかし、考えたところで、違ったところ何も変わらない。これが判断材料にはならないわけだし。

「カール・グスタフ・ケンプでしょうか」

カーチャルは自分の思考が同じ血を持つものに近いと確信したのは戦場に近づいてからである。
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