星屑は二枚
マーティルダが大人しくなったのは、オーベルシュタインにとってはよかったことかもしれない。
しかし、彼女を娘のように見ていた者にはかなり衝撃的ではあった。
そうもしていられない帝国軍ではあるが、マーティルダはあまり気にしてはいない。時は必ず訪れるものである、と聞かされたからだ。
その上、マーティルダには個人的な悩みもあった。
自分の親戚共が勝手に見合い話を始めたのだ。
落ちこぼれを早めに終い込もうと言うわけだ。
実は彼女、ローエングラム候の下で働いているとは言っていない。妙な噂がたつことが明白だったからだ。

「見合いだなんて、なんて古いやり方かしら!!」
「嫌ならしっかり言いに行くべきだわ」

マーティルダはヒルダにそう言われたが、その気にはなれなかった。笑われておしまいであろう、と先入観に囚われていた。
見合いの話は広まりはしたが、続くことはなかった。
ある日、ミッターマイヤーはマーティルダにあるものを与えた。それはオペラのチケットである。

「え、なぜこれを?」
「え、それは・・・」

ミッターマイヤーには答えがなかった。
これは、ミッターマイヤーの貰い物でそれをさらにマーティルダにあげただけだからだ。
マーティルダは答えのない問題に答えをつけた。
チケットが二枚あったからだ。

当然ではあるがオーベルシュタインにも見合い話は入ってくる。
どう思っているかはともかく。
しかも今日は見合い当日。
しかし、マーティルダは微笑みながらオーベルシュタインに会いに部屋を訪ねた。
フェルナーは彼女の恋を知るだけに不思議な気分になる。

「今日、夜はお暇ですか?」
「仕事が終わればの話だ。」
「じゃ、手伝いますね。ご褒美はこれで」

マーティルダはオーベルシュタインに何か紙を差し出した。
オペラのチケットである。
フェルナーは遠目から覗いてみる。日付は今日。
彼女は見合いを出るより、無断欠席を選んだのだ。それが意味するものをマーティルダは当然気づいている。
オーベルシュタインも何故自分が誘われたか、何故今日なのか気づいてた。

「争う気か。」
「売られたのはこっちですから。高値で出してやります」

オーベルシュタインはチケットに触れた。

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