04.ユウコの家出


目を開けたらお花畑だった。
意外な光景に目を奪われる。ここはどこだ。
お花畑の中、クロノスが手を振っている。こちらへ来いということらしい。
歩み出そうとした時、誰かに手を引かれた。
振り返ると腕だけがぶら下がっていた。


目を覚ます。現在の時間は体内時計から推理して午前3時だろう。
まだ暗い。本来なら寝ているべきだろう。
マルチェロは布団から起き上がり、ククールが横で布団を抱き抱えながら寝ていることを確認した。
横で寝るなど腹が立つが、五人で家にいるのだから文句は言わない。
エイトの姿がないことに気付き、玄関を開ける。
テラスにでもいるのだろう。その考えは当たりだった。
テラスで外を見ているエイト。
ここはトゥーンタウン地区。ジュレットのジャングル地区辺りならいい景色だっただろう。

「あれ、起きたんですか?
大丈夫ですよ、僕はマルチェロさんみたいに突然いなくなりませんから」

「貴様、何が言いたい?」

「クロノスと一緒に夜中に抜け出したり?
ヌーク草を盗まれたのは腹が立ったけど」

誤解を招く言い方をするエイト。わざとなのは見ればわかる。
マルチェロはこの青年の表情を眺める。ポーカーフェイスが実にうまい青年だ、と感心した。
ククールが少し見習えばいいのだが。
外を見ている青年は両手に小さな瓶を抱えていた。
中には手紙らしきものが見える。

「それはなんだ」

「・・・・・・
僕がこの世界でしなきゃいけないことは多分、この手紙の主に会うことなんです。
それが例えプロデュースされし英雄であっても、僕は動き回るだけなんです。」

「中身はなんて書いてあったのだ」

「さあ?宛先も送り主も曖昧な手紙でした。
確か宛先は『すべての物語を綴るものへ』だったかな。
それより、マルチェロさんは覚悟は?」

二人は目を合わせた。
「覚悟は?」という質問は愚問だったか、と悟るエイト。
外から見える景色は決していいものではない。
飾られた家、ふわふわした家具に彩られている。そこにある醜い姿を見る勇気はあるのか。
生きる上で大切な決断になるだろう。
二人は心で頷いてみせた。
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