25.小規模な家出 1/3

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ビッテンフェルトに伝わるまで、かなりの時間を要した。9月9日の記念式典にて、キルヒアイスが殺害された件もあるが、フェルナーがこの件を処理したことも理由にあがる。もっともカサンドラがビッテンフェルトに報告しなかったことが大きな理由だ。
彼女は、リヒテンラーデ公が逮捕されるまで、ビッテンフェルトの耳に入れないように必死になった。同時に抑え込むストレスが彼女を疲れさせた。
同じ下士官には心配される。笑顔を取り繕う。仕事をする。食事が喉に通らない。
危ないことは理解できている。食事から水分を取るのだから、食べなくてはならない。しかし、食べても吐き戻してしまう。出せないものがないと胃液が出た。水分の摂取量を上回るほど放出している。
顔色が悪いことは嫌いな鏡を見れば分かる。不器用なためしなかったメイクをしようか、と思うぐらい酷い。幸い、ビッテンフェルトと会う必要がなかったため、することはなかった。
副参謀長と副官は、カサンドラが黙っている事実に不安を覚えた。

「私は閣下に言うべきだとおもっていますが、オイゲン副参謀長はいかに」
「同じくそう思っています。しかし、今、私情を混ぜられると、厄介である事実はどうしようも」
「黙っていて後で怒られる方も恐ろしい」

カサンドラがあの体調のまま怒鳴られては可哀想ではないか。ディルクセンはどちらに対しても不安になったが、オイゲンと同様にあくまで軍人として選択をした。
これは完全に男女関係とカサンドラの精神状態からみると、不正解な選択でしかない。
吐き戻し、無理に食べ、消化のためにタンクベッドに潜ってみる。これを繰り返すだけの上級曹長に、下士官の士気が上がるはずがない。彼女には士気上昇の役割があったが、この時は果たせるものではなかった。感情の切り換えが下手な自分に腹を立てながら、俗にいうローエングラム軍は首都オーディンに引き返した。
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