23.セーフルーム 1/4

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カサンドラとロイエンタールは、会ったことは数えるほどしかない。しかし、不仲ではあったことは確かで、それが「同族嫌悪」というものだ、とも知っていた。ロイエンタールが「戦いで自分を見つけられない」というなら、カサンドラは「大切なものの横にいないと、自分を見つけられない」。ロイエンタールが彼女に不信感を抱いていた事は事実だが、加速させていた要因であった。
それよりも、まず状況を見てもらおう。
何故、この二人は、暗闇で、微妙な距離を保ちながら、体育座りで、同じ空間にいるのだろう。
今から、数時間前。ちょうどキルヒアイスが技術士と話し合い、ミッターマイヤーがバイエルラインの足につまずいた頃。
エラ伍長はカサンドラを、捕虜交換で補給された下士官の前で待っていた。カサンドラは、ちょっとした失敗では怒らなかったが、時間に対しては自分にも他人にも厳しい。そのため、最低でも五分前には待ち合わせ場所にいなくてはならない。
しかし、今日は珍しく、カサンドラが来ない。急な仕事でもあったのだろうか。ともかく、カサンドラなしで仕事は出来る。もしもの為に彼女はあらかじめ指示を出していたからだ。最終確認はどうしても、いてもらわなければならないが。
仕事が終わり、解散したものの、やはり来なかった。途中体調を崩して倒れているなら誰かを報告に寄こすだろう。

「まさか、男どもにリンチされて・・・いや、男どもをミンチにしそう」

ともあれ、最終確認をしてもらうため、エラは探しに出かけた。
医務室、食堂、休憩室、更衣室、タンクベッドなど考えられる場所を探しまわるが、痕跡や目撃証言すらない。カサンドラが今日やることになっていた仕事を、なぞって行動をすることにした。
すると、彼女はエラ伍長らとの仕事のために、集合の30分前に到着するように動いていたことが発覚。
先ほど口にしたことが事実ではないかと、嫌な予感がしたエラはビッテンフェルトではなく、オイゲンを探した。

「オイゲン大佐、私、エラ伍長と言います」
「どうしたんですか、急いで」
「カサンドラ曹長を見ませんでしたか。どこを探してもいないんです。」

話を聞いたオイゲンは「迷子かな」と呟いた。ちょうどビッテンフェルトが、カサンドラの迷子話をした後だった。しかし、すぐにそれはないと思う。
カサンドラなら、仕事と好奇心を天秤にかけないだろう。根っからの真面目っ子なのだから。
もし、犯罪に巻き込まれたとしたら、ビッテンフェルトが犯人を殴りとばすだろう。それが分かっていたから、きっとオイゲンが頼られるのだ。
行方不明を聞いたビッテンフェルトは、案の定、目の前にあった仕事をほったらかそうとしたそうだ。
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