22.食えるもの 1/2

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リップシュタット戦役が始まり、レンテンベルク要塞を攻撃し制圧するまで、戦死者や補給に関する事務処理をしつつ、カサンドラは料理を練習していた。当然食糧は無限にはないので、失敗したらビッテンフェルトの胃袋に無理にでも納めるのだが。
全く分からないようで、本人は中火らしいが強火だったり、頭では分かっていても水と油を混ぜたり、と楽しげな光景になっていた。今は飴色が分らずに玉ねぎを焦がしている。そして、なぜか重曹のかわりに粉の胃薬を入れている(成分次第では代用が効くが)。錬金術でも始めたいのだろうか。
カサンドラには料理本がアバウトすぎるようで、「適量とか知らねぇ」とぼやいていた。正直、ひき肉とバラ肉を間違えるような人なので、料理なんてしないで欲しい。
「正直な、焼いた食パンにマヨネーズにでっかく切ったトマトを乗せたトーストが、一番マシだったぞ」
と毒見とゴミ箱のビッテンフェルトは言う。
猪突家ビッテンフェルトはとりあえず食べてから文句を言うが、カレーに牛乳を引っくり返したものより不味かったものがある。
前日、「人間が食えるものを出せ」と言った為、カサンドラを怒った事が原因である。

「涙が出るようなもんを作ってやるぜ」

と反撃したカサンドラは、確かに涙が出るものを作ったらしい。嫌がらせ的な意味で。
ホラーゲームに出てくる、あの羽生蛇蕎麦を再現したのだ。カサンドラは敢えて自分で試し、味の知っているものを出した。簡単に説明すると、冷麺にイチゴジャムを入れたもの。当然不味い。
実はキムチなど辛さのあるものを入れると、「食べれないことはない」ことを知っている。当然、入れてあげなかった。
本能から食べてはいけないとわかっていながら、ビッテンフェルトは吐き気と戦いながら食べていた。不機嫌なビッテンフェルトを見たカサンドラが、反省したことは言うまでもない。
なぜ別れないのか。カサンドラが好きな人を苛めたくなるタイプなのかも知れない。それに、反省したカサンドラは、夕食はきっちり過ぎるほどレシピ通りに作ったという。
ビッテンフェルトは「面白味がない」と言ったが、彼は胃袋の耐久テストでもしたいのだろうか。
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