21.ロリコンではない 1/2

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官舎の鍵を忘れたカサンドラは、仕方がなく書類の整理をしていた。
帰りたいが、保護者兼恋人のビッテンフェルトは、軍務尚書エーレンベルク元帥を拘禁、指揮文書発送機能を抑えるべく出払っている。カサンドラを参加させなかったことに深い訳はなく、単純に忘れていただけらしい。
それを見た友人のエラは一緒に書類の整理と雑談に付き合った。最近伍長に昇進したこの友人は、カサンドラをからかうことを楽しんでいる。からかわれる側はあまり興味を示してくれないため、からかう結果は楽しくないのだが。今回は休暇にしたことを聞きたかっただけだろう。

「で、遊びに行ったの?うまいもの食べたり、買い物したり。まさか、ずっと家にいたの!?
・・・・・・それも濃いわね」

ニヤリと笑う彼女の想像とは、違う意味で家にいた時間は長かったように思われる。
書類から顔をあげないカサンドラに対して、ふて腐れながらも要らない書類を束にする。

「男って変な場所でシャイよね。ビッテンフェルト提督もそれに倣うみたいね。あの人も男だったか〜」

ただの猪ではないな、とカサンドラは適当に返答した。
男がシャイか否か、彼女が知るはずがない。男性と接する機会と時間が自分より長いエラに同意しておく。言われてみれば、初めて会った際、ブーメランパンツを掲げるカサンドラに、恥ずかしさを見せていたように感じる。

「女は大胆だからね。そんなわけで裸で迫ってみたら?」
「私なら引くわよ?そもそも場所がないし。」
「未だに床で良しとするビッテンフェルト提督がおかしい。なんで二人暮らしでシングルベッドなのかしら。嫌がらせ?」
「二人暮らしを基準にしてないだけでしょう。そこの書類は捨てないで!!」

エラが誤って必要な書類を、要らない束に入れようとしたので、声を張り上げた。
雑談より仕事、良いことだが、エラは恋愛の面で悩みところを感じた。このままでは自然消滅してしまうのではないか。恋愛関係が自然消滅とはよくある話。そうなってしまってはエラには面白くない。
別れるなら壮大な喧嘩をするか、どちらかが浮気をするか、してもらわなくては観客としてつまらない。

「はぁ・・・・・・
それに、興味があるならもうしてるでしょ。私には色気がないってことよ」
「ないのは胸じゃない?」

怒りを露にしたカサンドラだったが、胸がないことは事実だったため、何も言わなかった。
今まで女らしさを気にしたことがなかったが、これを機に、少し気にしてみようと思っていた。胸のサイズは豊胸手術以外に変えようがないが、たまにはスカートでも着てみようか。
考えが読めたエラは、カサンドラの可愛い面にニヤけつつ、同時にビッテンフェルト提督に向かって叫びたかった。
「この甲斐性なしが!!」と。
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