39.暇つぶしに 1/3

bookmark
シャワーから上がり、パンツを履いて、バスタオルを肩にかけたままでソファーに座った。テーブルにあったテレビのコントローラを手に取り、ニュース番組をつけた。皇帝の結婚の話ばかりが持ち上がっており、正直うんざりしている。結婚の何がいいのか。金がかかり、面倒にも大勢の前に出なければならない。少数のみの参列による結婚は気を張らずに出来てよいではないか。結婚の幸せを振り撒きたいだけだろうか。「そういえるのは既婚者だからか」と呟いて納得した。もしくは今の生活に不満が少ないから、そう考えられるのだろう。
のんきにしていると、呼び鈴が鳴った。カサンドラは憂鬱な気分になりつつ、玄関を開けてしまった。目をそらすケスラーに首をかしげて、カサンドラは寒いことに気づいた。服を着ていなかった。大事な部分が下着とバスタオルで隠れているものの、普通によろしくない格好だ。黙って引き返し着替えてから、再び玄関を開けた。

「すみません、忘れてました。男なんてビッテンフェルトしか来ないもので」
「ビッテンフェルト提督でも怒りますよね」

謝っているが反省はしていない、そういう態度だった。危機感がないのか、危機感を感じる気がないのか。少々自分を蔑ろにしてしまう癖が彼女についているのかもしれない。

「で、何をしにきたんですか。」
「お願いがあってきました。実はですね」

珈琲を口にしながら、話を聞く。内容はカサンドラにとって正直面倒な話だった。興味ないので、そう言って断る訳にはいかないことは分かっていた。若干腹を立てたカサンドラは、不機嫌そうにケスラーに言い放つ。

「それ、拒否権最初からあります?」
「当然ありますよ。軍人ではないわけですから」
「正直にいうと、腹立たしいです。憲兵総監がわざわざ頼みに来て、断りにくい環境で頭を下げてくる。拒否権なんて無いようなものじゃないですか。しかも内容が内容です。ビッテンフェルト提督にはまさか言いましたか」
「いいえ、言ったら本人の意思を無視しそうだったので。」
「確かに。じゃあ断る」
「そうですか。すみません、お忙しいところを」
「と、言いたいところですが、暇を持て余してまして、引き受けますよ」

不機嫌になった瞬間から断られることを覚悟していたケスラーは、目を見開いてカサンドラを見返した。

「当然一般人に頼むんですから、ボーナス出ますよね?」

一瞬でもありがたいと思ったケスラーの気持ちはすぐに塗り替えられた。ボーナスを要求するカサンドラの笑顔が腹黒に見えた。
[戻る]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -