4.喧嘩は技です。 1/2

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食事が終わり、オイゲンが帰り、やることが寝ることしかなかったのは互いにとって救いか。
寝場所に困ったカサンドラは椅子に座り、伏せて寝た。その間にビッテンフェルトが何やら怒鳴っていたのだが、わかるはずがないので無視。無視されたビッテンフェルトは、諦めてくれたのか。
目を覚ましたカサンドラは、自分がベッドで寝かされていることに驚きはしなかった。ビッテンフェルトが怒鳴っていた理由を理解して納得する方が先にきた。ビッテンフェルトは床で寝ている。意外にもこんな異常事態を受け止めきれている自分に、驚きを抱くこともない。異常事態を受け入れなければ死ぬかもしれないという思いが、驚きを捨てさせているようだ。
起きてきたビッテンフェルトは、朝からカサンドラに向かって何やら怒鳴ってきたのだが、やはり理解できないので無視した。朝ご飯や今日の話だろうと思ったのだが、全然違った。

「昨日から真顔だな。可愛いげのないガキだ。少しは笑え。」

唐突にそんなことを言われるなんて予想がつくだろうか。これはビッテンフェルトが悪い。カサンドラが理解できるわけがない。
動くビッテンフェルトを観察するように見つめてくるカサンドラ。この見つめられ方が気持ち悪いビッテンフェルトは、カサンドラをベッドから椅子に座らせ何やら言うのだが、やはりわかってもらえなかった。それでも最後まで怒鳴ってくるビッテンフェルト。こうして彼はやっと軍服を着て、出ていった。
物色するな。部屋から出るな。わめくな。と、言っていたのだが喚くのはビッテンフェルトの方だろう。
一人になり、カサンドラはやっと他人のことまで頭が回った。そう、トリップする前に一緒にいた理菜のことだ。彼女は無事なのだろうか。実は自分があれから死んだのか分からずにいる。もしも理菜もこの世界に来ているなら無事なのだろう。ただ、二人してこの世界に同じタイミングに来ているなど奇跡ではないか。カサンドラはとりあえずこう思うことにした。理菜は地雷を踏みやすい子だから、来ていても無事な確率は低いな、と。仮にも友人に対して冷たい気はするが、彼女なりに心配している。事実、理菜は状況把握が苦手で、言わなくていいことを言うタイプ。

「他人よりまず自分よね。生きてりゃそのうち会えるだろうし。」

そして、貸してたゲームを返してくれ。と、言うのだろうか。
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