32.ラングの愛想と私 1/3

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ずいぶんと古い話になる。黒色槍騎兵の訓練をかねた少数によるイゼルローン要塞での防衛任務中のことだ。
ビッテンフェルト不在の本当に小規模な訓練で、軽く見回りをして済ませるはずだった。迷い込んだ同盟の小規模な数の艦隊を発見し、形としての遭遇戦を行うと思われた。味方は新人ばかりの寄せ集め。敵は少数とはいえ、熟練者がいるに違いない。カサンドラは大きな欠伸をして、何をするわけでもなく宇宙空間を眺めていた。無意味な争いで無意味な血を流す必要は双方ともにない。数多くの兵士は、適当な攻撃をして退去命令が出ると思い、艦隊の進行速度を落とした。
そのことを激怒した上官。オペレーターは全員上官の顔を見た。

「自由惑星同盟などと名乗る者らを一掃するぞ!!」

それを聞いた者は全員耳を疑った。味方が新人まみれで見回りを任されただけの艦隊に、疲労してるとはいえ戦えるとは思っていなかった。ざわつく中、怒り続ける上官。この中でくだらない指示がすぐに通るはずはなく、ただ慌しく空気だけだが流れていく。見かねたカサンドラは穏便に済ませるために進言した。

「皇帝より預かっている艦隊をこの争いで塵にする必要はないでしょう。まして、上官であるビッテンフェルト提督がいない中で行ったのであれば、言い訳はできますまい」

これが逆効果だった。

「貴様、あの程度の反乱因子を私では倒せないというのか」
「そうは言ってませんが」

間接的に「貴様は馬鹿か」と言ったのだがセンスのない上官には理解できないようだ。それどころか、例の馬鹿はカサンドラの手を引いて自分の個室に連れ込んだ。見ていたエラは目を丸くして驚いた。
つまらない上官と二人きりになったカサンドラは、上官の顔をにらみつけた。カサンドラに興味のない馬鹿は見もせずに言い放った。

「ビッテンフェルト提督の被保護者の身だからと調子に乗っているな?艦隊の指揮をしたことなのない小娘の遊び道具ではないのだ。存在で艦隊の士気を乱すような君にはできる限り引っ込んでいてもらおう」
「引っ込むのは賛成します」

顔を合わせずに済むなら、互いに有益であるが。

「新人の多いこの艦隊で戦いことには反対いたします」
「君は、オーディンの守護の下、どのような理由で負けるというのかね」

オーディンの守護という言葉に限界を感じた。おとなしくしていたカサンドラはつぶやく。

「馬鹿だ」
「何か言ったかね」
「オーディンの守護の下で生み出された馬鹿によってこの艦隊は負ける可能性があると言ったんです。」
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