29.銀河の向こうには 1/4

bookmark
軍内部ではビッテンフェルトの結婚騒動で盛り上がっていた。ミュラーもワーレンもその輪の中で盛り上がっていた内の一人である。ファーレンハイトやルッツが、その輪にいないことが残念でならないようだ。

「あのビッテンフェルトが結婚だぞ?カサンドラとなら確かにあり得そうだが」
「軍にいらっしゃる時のビッテンフェルト提督だけを見ていると、やはり想像がつかないですね」

カサンドラが小さな家出をしたことを知る彼らでも、実際に結婚すると分かると妙な気分になった。戦争や軍が恋人と言わんばかりのビッテンフェルトが、一人の女を手元に置いて愛でるのだから。

「新年早々に式を挙げるらしい」
「今年はキルヒアイス提督のことがありますから、仕方がありませんね。その日程を決めたのはカサンドラでしょうか」
「だろうな。ビッテンフェルトが軍艦以外に素早く動けるはずないだろうからな」

同じ提督らから散々なことを言われているビッテンフェルトだが、間違いではない。カサンドラが式場から招待客まで計算している。軍を離れるタイミングから、購入予定の家まで決め始めていた。ウェディングプランナーが驚くほど迷いなく進めているように見えたが、彼女にも一つ迷ったことがある。
ウェディングドレスをどうするか、である。自分が着飾ることに興味をまったく示さないせいで、ウェディングドレスをレンタルするにしても、どうでもいいと呟いてしまうのだ。ある程度着飾らなければ、ビッテンフェルトの部下が式を挙げる際に困るだろう。しかし、自分としてはドレスなど着たくないのだ。ビッテンフェルトは軍服を着れば済むことだが。
彼女の相談役を買って出たのは、マーティルダだった。顔に火傷を負ったようで、かなり痛々しい見た目に変わっていたが、元気であることに変わりはない様子。人工皮膚への切り替えは乗り気ではないようで、しばらくは包帯を巻いたまま過ごすと言い出した。

「片眼しか使えないと視力落ちるよ」
「そうしたら、義眼だね」

心配して言ったつもりが、あっさりと義眼宣言をされたカサンドラは、それ以上は触れなかった。
[戻る]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -